ろっぴーのブログ

大好きな方々を愛でたい

雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」感想

原作映画については断片的な情報しか知らず、公演は千秋楽映像のみを観た上での感想です。
ストーリーの内容に関しては「こうだったらいいな」という願望を多分に含む私なりの意見ですので ご了承ください。

この作品を形容する際に「宝塚らしくない」という言葉を用いている公演評を何度か目にしました。
「宝塚らしい」が主人公とヒロインがロマンチックに結ばれるラブストーリーやド派手な英雄譚なら、確かにワンスはその範疇には入らないかもしれません。

主人公ヌードルスは、誤解を恐れずに言えば「その他大勢」の人生を歩んだ人間だと感じます。
若い頃 富を得て成功することを夢みながらそれを叶えられず、田舎でひっそりとありふれた小市民として余生を過ごす。
この時代のアメリカには、同じような人生を送った人がたくさんいたでしょう。
同じワルでも、世界史の参考書に名前が出てくるアルカポネとは違います。

そもそもタイトルからして、何の情緒もない直訳をしてしまえば「かつてアメリカで」。
主人公やストーリーにはまったく触れていない、アメリカで過ごしたことのある人になら誰でも冠し得る題名です。

そんな「その他大勢」の主人公を宝塚の舞台で主人公として成立させることができたのは、第一にだいもんの力量あってこそでしょう。
まさに百聞は一見に如かずで、私が下手に文章にするより本物を観ていただいた方がずっと伝わるものがあるので細かいことは省きますが
観客の心を震わせるお芝居
自由自在に感情を表現する歌声
研ぎ澄まされた男役としての在り方、オーラ、所作etc...
だいもんが舞台で見せてくれたもののうちどれか一つでも欠けたら、宝塚におけるミュージカル版ワンスは薄っぺらいものになってしまったはずです。

どんなに他の出演者のパフォーマンスが素晴らしくても宝塚の作品は主演=トップスターありきですから、この作品のアイデアを長年温めてきたという小池先生の「運命の女神は私に望海風斗を与えてくれた」という言葉もさもありなん。

少年時代
ヌードルスの少年時代は、苦しい生活の中お金のために仲間たちと悪さをする日々。
彼らの衣装がだぶついているのは 体の成長に合わせて服を何度も買いかえる余裕がないから大きめのものを着ているということなんでしょうね…

でも、そういう背景は置いておいて…と言いたくなるぐらい少年ヌードルスがかわいい!
いたずらっぽい表情、好きな子への態度が不器用になってしまうところ(ちゃっかり不意打ちでキスしちゃったりするけど)。
「窮地を救ってくれた」とか「勝利者への第一歩」とか、大人ぶった言葉遣いも背伸びしている感じがして本当にかわいい。
一方で、年下の仲間をしっかり守ろうとするところは頼りがいがある。
しかも顔は望海風斗なわけだから(ここ大事)、そりゃモテますよね。幼い女の子ってワルだとしても仲間内で特に目立っている男の子に惹かれちゃう傾向があると思うのですが、ヌードルスも色んな子から好意を寄せられていたんだろうなー。本人は気づいていなかったかもしれないけど。

というのも、ヌードルスは大好きなデボラに夢中だから。
ただ、後に彼女と自分の立場の違いに苦しむヌードルスですが 観客から見れば子どもの頃から二人には社会的な壁があるんですよね。

デボラの親はダイナーを経営している=定職がある立場で、後継ぎになるお兄さん ファット・モーもいる。
バレエのお月謝を払えるのも バレエシューズやチュチュや綺麗なカーディガンを持っているのも、それだけ暮らしに余裕があるということ。バレエ教室をしている倉庫にはピアノも置いてあるし。
病気のお母さんを支えて精一杯の生活を送るヌードルスとは大きな違いがあります。

そしてもう一つ違ったのが、二人の夢の描き方
デボラは「ショービジネスで成功して有名になって、どこかの国の皇太子にプロポーズされる」と皇后になるための道筋を考え、実際にブロードウェイに足を踏み入れようとしている。計画というにはあまりにも大胆かもしれませんが、時代は少しずれるものの かのグレース・ケリーのような実例もあるわけで 全くあり得ないとは言えないストーリーです。
それに対し、ヌードルスが語るのは「何でもいい、でっかく儲けるんだ」というふわふわした理想。日々の暮らしに追われる環境で彼が具体的な将来を思い描くのは難しかったのだろうと思いますが、この先も考え方の微妙なズレが埋まらなかったことを思うと この時点で既に二人の道は別れ始めていたのかもしれません。

でも 夢をもってキラキラしているかわいいデボラにヌードルスは恋をして(少女デボラの真彩ちゃんは天使なので無理もない…あの声で話しかけてもらえるならゴキブリ扱いだろうと気になりません)、デボラも這い上がろうとする野心をもったヌードルスに惹かれる。
デボラは「悪いことはしないで」と釘はさしてもヌードルスを決して見下さないし、ヌードルスも経済的な格差なんかに囚われずデボラに気持ちをぶつける。
現実に負けず、いつか一緒に頂点に登り詰めるという志を同じくする二人が眩しくて切ないです。

そしてヌードルス少年の前に現れるもう一人のキーパーソン、脚の長さを隠しきれていないマックス
頭の回転が早くて抜け目がなくて度胸があって、ピンチのヌードルスたちを鮮やかに助けてみせる彼を見ると「犯罪成功の秘訣は1インチの恐れもないこと」という言葉にも頷かざるをえません。

小競り合いの勢いで殺人を犯してしまうヌードルス
とても心に残ったのが、この場面でのデボラのソロでした。
ヌードルスは人殺しに手を染め、ただでさえ成功するには不利な出自の上に前科まで背負うことになる。しかも「陽の当たる道を歩んで」と何度も伝えてきた彼女にとっては裏切りとも言えるようなことをしでかしたのに、それでも尚彼の将来を信じている。
皇太子にプロポーズされて“本物の”皇后になるという夢は捨てて(諦めたのではない)、単に皇后になるのではなく「皇帝になったヌードルスの」皇后になることを夢みる。成功を目指す人なら誰でも良いのではなく、ヌードルスでないと駄目なのだという彼への愛情を強く感じます。

その他のキャストについて。鋭い目つきが印象的なバグジーのしゅわっち、絵に描いたような「かわいい弟分」ドミニクのあみちゃんも新公主演に抜擢されるだけあってさすがの存在感。
厳しくレッスンしながらも温かく子どもたちを見守るシュタイン先生のヒメさんも、素晴らしい安定感で舞台を締めてくれていました。

青年期
出所して再会したヌードルスたち4人。スーツでキメた立ち姿のスマートなこと!男役とはかくあるべし、ですね。
7年前よりも何となく陰のある表情を見せるようになったヌードルス、かわいらしかった笑顔を封印して隙のない雰囲気を漂わせるマックス、一気に大人びたコックアイとパッツィー。みんな本当にかっこいい!

そして、ブロードウェイのプリンセスになったデボラ。大人っぽいタイトなドレス姿と落ち着いた佇まい、ヌードルスでなくてもうっとり…
フォーリーズの場面について「役であるデボラがさらに役を演じていることを意識した」と真彩ちゃんが語っている記事を読みましたが、確かにショーでのデボラの方が素に近いのかも。これぞ真彩ちゃん、という目をきゅっと細めた笑顔を見られて幸せです。

二人がデュエットする「いい夢だけを」。
「お前(あなた)の夢ばかり見ていた」と歌い合う二人に ヌードルス良かったね…!と思うけど、やんちゃな少年が大人になって現れることが「想像通り」だったデボラに対して ヌードルスが追いかけていたのはチュチュを着けて踊っていた少女時代のデボラの姿。
ああ、やっぱりデボラに比べるとヌードルスは自分の理想を追いがちだなあ…とここでも二人の微妙なズレを感じたり。

スターとして開花したデボラと再会する心の準備ができていなかったヌードルスの困惑が「真夜中にひとり」の歌詞には表れていますが、ヌードルス お前は悪魔」というのは逮捕後に実際に彼が浴びせかけられた言葉なのかもと胸が痛くなります。

デボラの他に触れなくてはいけない女性がもう一人。インフェルノの歌姫、キャロル。
男役であるあーさがメインキャストとして女役を演じる上での努力や苦労は山ほどあったはずで、それはもちろんわかっているのですが敢えて言わせてほしい。
顔が良すぎる。
美の暴力とはこのことか…という有無を言わせない美しさ(いつも衝撃的に美しいのですが、今回は女役なのでまた違ったフェーズの衝撃というか)。

フォーリーズのデボラの直後に登場する演出が実に効果的で、ファルセットを響かせるデボラに対してキャロルのナンバーは低音域。
でもだからこそ、男役として歌うときとの差を出して女声の低音として聞かせるのはとても難しかったと思います。
感情をのせる曲とは少し違うショーナンバーとしての歌い方、メリハリの付け方も。
だいもんから歌唱のアドバイスを受けたそうですが、その成果と彼女自身の努力をとても感じる素晴らしい出来でした。

ショーガールたちと歌い踊るときは艶やかでクールで男前で、と思いきやキュートな仕草と笑顔もとっても魅力的で…というプロっぽさを感じるキャロルが マックスには甘えたりまっすぐに気持ちをぶつけるのがいじらしかった。
元男役さんが退団後に「男役の癖が抜けなくて…」と話すのをよく見ますが、現役の男役なのに咲ちゃんの隣で違和感なかったあーさはすごいですね。相手役としての咲ちゃんの力量ももちろん大きかったと思いますが。
華やかな存在感といい難しい役柄といい、彼女にしかできない役だったのではないでしょうか。

もう一人のメインキャスト、ジミー。
結末を知ってから観ても、何だか捉えどころのない人だなという印象です。一番考察するのが難しい。腹の中を見せないというか、裏がありそうだけどなさそうな雰囲気というか… 原作よりも出番を増やしてこの役を凪様に当てた小池先生の信頼が伝わってきます。

前半で唯一本性を見せたかなと感じるのは拷問のくだりですが、利用できる奴を利用して使えない奴は切るというスタンスはヌードルスたちも同じだから むしろ同類だと感じて組むことを決めたのかも。
冷静に計画を立ててストライキの現場でも堂々と振る舞って大勢を引っ張っていく力、善悪はさておき頭がきれる大物ですよね。大がかりな演出や衣装がなくても存在感を示す凪様、さすがです。
そしてこちらも顔が良い。笑

ここで1幕ラストのあの場面について。

まず、ヌードルスの空回り感に観ている側としては心配でならない。
お金のかけ方よ!自分の愛情と二人の思い出の象徴であるバラと王冠、いけすかないプロデューサー(あくまでヌードルスの立場からすればですよ、カリ様は素敵です)に負けじと手配したリムジン、貸し切りにした高級レストラン。
気持ちは嬉しいけど…というデボラの戸惑いも納得です。

そんな反応に焦って、次々に踏まれていく地雷。

「俺たちはロウアーイーストサイドの出なんだ」
→自分の力では変えられない事実。それでもデボラは子どもの頃から努力を続けて見事ユダヤ人初のスターになったのに、今まで出してきた結果もこれからのキャリアも否定されたような気持ちになったことでしょう。
私がデボラだったら「俺“たち”!?悪行で金稼ぎしているあなたと一緒にしないで」と思ってしまいます…

「金で買われたってわけか!」
→またデボラの努力を否定するようなことを…

でも、なぜハリウッド行きを告げられただけでヌードルスはあんなに逆上したのでしょう。
ショービジネスの世界からは離れるかもしれない、でもスターとしての高みを目指すことには変わりないわけで。

デボラが自分の近くから離れる=デボラに愛されていない
ヌードルスは感じたのかなと思います。
子どもの頃こっそりデボラを覗き見るところから始まった恋で、自分が罪を償っている間も彼女は表舞台で着実に成功を収めて。
同じ夢を抱いていたはずなのにどんどん自分が置いていかれているような焦りや不安、デボラに対する劣等感もあったのではないかと思うし、その気持ちはわかります。それでも。
ブロードウェイで活躍する中で野心ある有能な男性を何人も見てきたであろうデボラが7年間姿を消したヌードルスを忘れず、今も「皇帝になれる」と言うのはそれだけの愛があるからで どうしてそこに彼は気づかないのか!

とはいえ、ヌードルスの視点で考えてみると一つ思い浮かぶことが。
慣れた様子でシャンパンをオーダーし、禁酒法の時代でも付き合いでお酒の席があると話すデボラ。彼女はインフェルノにも来店するし、そもそもお兄さんのファット・モーはマックスに雇われている身。
口には出さなくても「お前は俺たちのビジネスを否定するが、それを許容して今のお前があるんじゃないのか」という思いがあって、それがマックスたちと手を切らない背景にあるのかも。単なる憶測ですが。

ヌードルスはとにかく「皇帝と皇后」という結果にこだわり、皇后の座を掴みかけているデボラの隣に相応しくあらねばと感じている。
でも、デボラは少女時代はヌードルスと同じく夢を叶えることを第一に考えていたかもしれないけど、社会に出て色々な壁にぶつかる中で その夢を叶えるための過程が大切で、ヌードルスが真っ当なやり方で努力してキラキラした思い出と共に一緒にいてくれるなら最終的に実現できなかったとしても構わないという考えにシフトしていたのではないでしょうか。ユダヤ人のヌードルスが普通に働いても大きな成功を収めるのが難しいことは彼女もわかっているはずですし。

子どもの頃から微妙に生じていた二人の考え方のズレが決定的な亀裂になってしまったのがこのシーンなのかなと思います。
切ない。もしデボラが「あなたを愛している」とはっきり伝えていたらこの展開は回避できていたのでしょうか。でもタラレバを言い出せばきりがないし、二人とも不器用だったんだなと受け止めるしかないですね…

2幕のハバナのシーン、マックスとキャロルが楽しそうに一緒にいるのが見られてほっとします。よかったねえキャロルちゃん…涙
サナトリウムヌードルスがここのお祭りの曲を歌うのも納得。彼から見ても、ハバナ滞在中の彼女が一番屈託なく幸せそうだったということですよね。爽やかなワンピース姿もかわいい。

そしてみちるちゃん演じるエヴァがめちゃくちゃ好きです私。
グイグイ来るけどべたべたした不快な距離感ではなく、しかもキュートという絶妙なセリフ回しや仕草が素晴らしい!さすがです。

楽しい時間は束の間、禁酒法の撤廃が決定。
インフェルノの経営も危うくなるはずですが、さよなら禁酒法のキャロルがかわいすぎる。
その陰でマックスはジミーに融資の相談を持ちかけますが、「君はこんな所に置いておくのは惜しい男だ」っていうセリフ 最初に頼っておきながら裏稼業を下に見ているようなジミーの本心が透けて見えて怖い…

連邦準備銀行の襲撃を目論むマックスに反対するヌードルス。警察に密告して阻止しようとするも予想外の展開で仲間たちは死亡。
コックアイのまなはる先輩とパッツィーの縣くん、本当にいい味出してましたよね。若干抜けてて危なっかしいところがあるパッツィーと冷静に嗜めるコックアイ。雄弁なハーモニカも印象的でした。安定感のある中堅のまなはる先輩と有望な若手スターの縣くんをオイシイ役で見られて嬉しかったです。

さて、銀行襲撃失敗の後ロッカーの共同資金も失ったことを知り、絶望するヌードルスの場面。
アポカリプス(黙示録)もダビデの星も、映画ではヌードルスとデボラが聖書を読むシーンがあるという情報を知っていたので脳内補完しながら観ましたが、伏線があった方がわかりやすくはあったかもしれません。
でも神様はどうしようもない状況でやり場のない思いをぶつける対象としての役割もあると思うので、無理がある演出とまでは言えないかな。日本人にはあまり馴染みのない感覚ですが。
ここのセットが奥行きを感じてとても素敵だったので、ぜひ劇場で見たかったなあ…

一方、デボラは例の修羅場を迎えた末サムと破局
りさちゃんとのバチバチ琥珀でもありましたが、今回もなかなかにすごい。
サムに対する「私の部屋でしょう、契約で保証された」っていう反論が ああ、デボラだなあ…ってすとんと落ちて小池先生の言葉選びに感激してしまったんですが、共感してくださる方はいるでしょうか笑
「あなたは私を愛しているんじゃないの?」とかではなく、あまり取り乱したところを見せず理詰めで攻める。芸能界で後ろ盾がなく、おそらくユダヤ人であることで嫌がらせなどもされながら今までもこうやって自分を守って戦ってきたんだろうなと この一言で想像させられたんです。

サムはベティーと結婚したようですが(そのまま添い遂げたかどうかはさておき)単なる遊び相手ではなく結婚を決意させたベティーと別れたデボラ。
サムが求めていたのは自立した誇り高い皇后ではなく、従順に自分に囲われる姫だったということなんでしょうね。
そしてデボラの方も本気でサムを愛していたのかというと…ヌードルスへの当てつけという側面もあったのではと個人的には思います。少なくとも男女の関係に発展したのはハリウッドへ行った後のはず。

そしてプレスインタビューのシーン。
映画デビューで賞をもらうという成果を出したにもかかわらず、記者たちに訊かれるのはプライベートなゴシップネタばかり。
高みを目指してブロードウェイからやって来たはずなのに、女優としての自分に関心をもっている人はいるのだろうかという虚無感をおぼえたことでしょう。
デボラがこの後どのように女優の活動を続けていったのかは描かれていませんが、最後までプライドをもって臨みながらも心の中でこの出来事が引っかかっていたのだろうと想像します。

そんな彼女のずっとそばにいてくれていたニック。あやなちゃんはデボラへの恋愛感情は抱いていない設定で演じていたそうですが、その意図通り純粋に幼なじみ同士の爽やかな関係に見えました。
もしお互いにそういう感情が芽生えていたら、この二人も一緒にはいられなくなっていたかも。
子どもの頃から楽しそうに音楽と向き合ってデボラとステップアップし、彼女に寄り添った彼にも悩んだり怒ったりしたことがあるんだろうなとスピンオフが見たくなってしまいます。

壮年期
ベイリー長官からの招待状がきっかけでサナトリウムを訪問し、キャロルとデボラに再会したヌードルス。ジミーとの癒着を報道するニュースまで。
ピースが揃いすぎですよね、デボラが現れた時点でベイリーがマックスであることを察していた可能性は高いと思います。

マックスとキャロルの関係ってすごく難しい。「恋人」ではなく「愛人」というニュアンスの違いは捉えにくいのですが、お互いに依存していたのかなという印象です。
キャロルは不安定な時代に女性として生きる不安を解消してくれる相手、マックスはアポカリプスの仲間たちとは別に自分を受け止めてくれる相手としてお互いが必要だったのではないでしょうか。

記憶喪失になったキャロルをサナトリウムに引き取ったのは巻き込んでしまった責任感ゆえだと思いますが、それだけではなくキャロル個人への思いももってくれていたら救われるとお花畑な私は考えてしまいます。
彼女がマックスの姿を見ればパニックになる可能性がある以上、お見舞いには行けなかったのだと思いますが…

そしてマックスとデボラの関係。
ジミーに生かされて別人としての人生を送らなければならないマックス、女優としてのキャリアを断ったデボラ。お互いにヌードルスを失った二人が愛情というより傷の舐め合いで繋がっていたというのが私の想像です。
マックスは未だに反社会的な金の動きに携わっているけど、それをデボラが許容するのは スターとは呼ばれても皇后にまではなれず夢破れた彼女に 仕方ないという諦めが生まれたからかもしれません。 

ヌードルスとデボラが再会してもそのまま別れる背景には二人とも以前とは生き方が違うこと、「自分と一緒にいることが相手の幸せではない」というお互いの思いがある気がして最後まで切ない…
でも、これもまた人生。まさしくC'est la vieですね(雪組さんの壮大な伏線回収?)

ヌードルスとマックスの関係も一筋縄ではいかなくて、素直にセリフに表れているのは時計のやりとりの際の「友情の証」という言葉だけだと思います。
でも、それまでのシーンでも二人がお互いの力や頭脳を認めてタッグを組んでいることは感じます。
ただの友人ではなく利害の絡むビジネスパートナーだったことが銀行襲撃の際の対立に繋がったわけですが、どちらかといえばマックスの方が人間関係に対してドライに見えるだけにあの時計をずっと持っていたのは意外でした。ベイリー長官になった後も手元にあるということは、おそらく銀行襲撃の際も身につけていたということですよね。
ヌードルスとデボラにとってのバラのように、友情の証というだけでなく夢の象徴でもありお守りのような存在でもあったのかもしれません。
時計をヌードルスに渡した意味は複数の解釈ができると思いますが、私はまだはっきりした答えを出せていません。色々な方のご意見を聞いてみたいポイントです。

社会的な破滅の危機に追い詰められてヌードルスに殺してくれと迫るマックスと、穏やかに断るヌードルスの温度差。
禁酒法撤廃後の苦境も爆破事故でなかったことになり、別人の人生を歩むことになったとはいえベイリー長官としても成功したマックスにとっては初めて味わう恐怖だったのかもしれません。
ヌードルスやデボラのように、一度敗れても人はどうにか生きていけるというある種の強さが彼にはなかった。
「どちらが勝ったわけでも負けたわけでもない。それでいいのさ」というヌードルスの言葉は「宝塚らしくない」人生を歩む私たち観客の多くに響くメッセージだと思いますが、マックスには届かなかった。
でも。それもまた人生なのでしょう。

観れば観るほどたくさんのことを考えさせられる作品です。まだまだ書き残したことがたくさんあるような気がします。
世間がかつてないような非常事態におかれ、宝塚もその影響を受けた中でこの作品のメッセージを丁寧に届けてくれた雪組の皆さんに感謝です。
一日も早く事態が収束し、劇場で素晴らしい観劇体験を楽しめる日が来ますように。

雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」退団者挨拶〜カーテンコール

3月22日、雪組ワンスが大千秋楽を迎えました。公演中止、再開、再び中止、そして再開&スカステで中継しながらの千秋楽という異例の公演。
その一番最後に心を温かくしてくれた退団者挨拶〜カーテンコールの模様と 今の自分が感じたことを残しておきたいと思います。

美華もなみさん
101期。まだ新公学年とは思えないほど、思いがまっすぐ伝わってくる素晴らしい挨拶でした。
明るい色でいっぱいのまあるいお花が、お人柄を表しているよう。

早花まこさん
にわさんが読み上げる退団者メッセージにさえ文才を滲ませていたきゃびいさん。
「この作品で卒業させていただくことを幸せに思う」という言葉が、もう…
あまりの組レポの面白さにきゃびいさんを語るときはついその話題を持ち出してしまいますが、それ以前に一人のタカラジェンヌとして、娘役として本当に素敵な方だったのだと 端正な挨拶を聞いて実感しました。

舞咲りんさん
「Memories of 舞咲りん」や退団者メッセージを通して、改めてヒメさんが宝塚に捧げてきた時間の長さや経験の豊富さを感じました。
「娘役も10年」。ヒメさんだからこそ説得力をもって響く、重い言葉。作り込まれた鬘や所作、台詞回しの一つ一つから 単なる女優ではなく「娘役」なのだという矜持と意識の高さを感じさせてくれる方でした。
娘役の仕事を天職だと言い切れるほどプロフェッショナルな娘役さん。稀有な存在です。
私が雪組のファンでいる時期にこんな方が在籍してくださっていたことに感謝します。

そして我らが誇るトップスター、望海風斗氏の挨拶。
各方面への感謝の言葉とそれに応える客席からの大きな大きな拍手。
ヌードルスと重ね合わせて「命ある限り前へ進むことの大変さ」と語っていましたが、劇場で非現実に浸ることができるのも命あればこそ。
「また元気に劇場で」。あなたが舞台に立ってくれるなら、きっちり感染予防して何度でも足を運びますとも!

そしてフォーエバタカラヅカ。瞳をうるませるだいもんと 前できゅっと手を重ねる真彩ちゃん。同じように気持ちを噛み締めていたのでしょう。
「嬉し涙ですね」というだいもんの言葉、半分は信じます笑
優等生な挨拶を遂行した途端に「お泣きになって!」とか「(客席?組子の皆さん?に向かって)ねえ!」とか「お茶の間のみなさ〜ん👋👋(かわいい)」とか、思いっきりあやちゃんモードに突入するところが大好きです。ほっこりするし安心する。

退団者が改めて一言ずつ挨拶する段になり、ヒメさんと入れ替わって中央に寄るもなみちゃんへのデレデレ具合が…笑
しかし気持ちはわかります。そして我々ファンもだいもんの笑顔を守りたい。

きゃびいさんとはやっぱり「どっせーい!」。
伝統ある(?)言葉ではないのに、なんでしょうこの安心感は。

ヒメさんが語ったイケコ先生とだいもんのやり取り、こちらも胸が熱くなりました。
そして「望海と真彩の雪組と繰り返し言ってくれるのが、真彩ちゃんのことが大好きな身には本当に嬉しくて。
真彩ちゃんはお披露目から2年を経てさらに美しく上品に進化されていますが、その影にはヒメさんはじめ 尊敬できる雪組娘役の先輩たちの姿があるはずです。
好きなジェンヌさんがそのような素敵な組で輝きを増していく様子を見られるのは、宝塚ファンにとって何よりの幸せだと思います。

その間もだいもんは「お泣きになって!(再び)」「最近涙もろくて…」と泣き笑いを誘ってきます。
同時に「この方たち(退団者のお三方)が一番悔しいはずなのに…」とファンを代弁してくれるような言葉も。

異例の事態になりながらも笑顔で公演期間を過ごされたというお三方。
このカーテンコールの場でもヒメさんは笑いながら時折だいもんの肩をビシバシし、きゃびいさんは「望海さんが明るくて強かったので、私たちもそれに付いて行っただけだと思います」と一言、もなみちゃんは先輩方のやりとりにニコニコ頷いて。
自分の言葉に真っ先に自ら拍手していくだいもんのスタイル、かわいい。好きです。

もう一度みんなを呼び、組替えが決まった潤花ちゃんに挨拶を促すだいもん。素晴らしい仕切りなのに、先ほどからちょこちょこ言葉の圧が強いせいで笑いが起きる笑

中止になってしまった東京の新公で新公卒業だった99期生にも言及。本当に温かい理想のリーダーです。大好きです。

まだまだ続くカーテンコール。遂に来ました、初日と千秋楽恒例の 客席のみんなと思い出作ろうコーナー。
しかし今回はこのご時世に配慮し、「無言で」との要請が。

拳を空高く突き上げ、
胸に当て、
幸せな思いを込めて心の中で「どっせい」と叫び、
また拳を空高く突き上げる。

ここに爆誕拳のどっせい運動。どなたの考案でしょうか?ありがとうございます。

しまいには「俺の愛は 枯〜れ〜な〜い〜♪ ジャンッ🌹」と一節聞かせてくださる元エリック様。いつでも、こんなときでも美しい響き。
「声出しちゃった!😆」って言ってるけど、あなたが笑わせにかかるから無言だったお客様なんて元々一人もいなかったのではないでしょうか。でも幸せなひととき!

もなみちゃんに「やり残したことはない?やるなら今だよ?ん?☺️」と圧強めに優しく確認。トップさんがこれだけ盛り上げてくださったら首振るしかないですよね笑

とうとう「終わってほしくないのでしばらくこのまま…」と言葉を放棄。新しすぎる。最高。
そして私はもちろん見逃していません、真彩ちゃんがここで両手を胸に当てて視線を上に向ける幸せそうな仕草を見せたことを。なんてかわいいんでしょう。
中継の枠はまだ余っていたのでこのままでも!と呑気な私は思いましたが、組長にわさんはさすがの冷静さで暴走を止めたようです笑

終演のアナウンスが流れても負けじと拍手を続ける現地勢の皆さんの力で、最後にもう一度だいもんが緞帳前に出てきてくれました。
「中止」とか「再開」とか夢の世界に似つかわしくない言葉をだいもんの声で聞くと切なさや悔しさが戻ってきますが、客席を見つめるキラキラの笑顔にそれすら浄化されていくような。
こちらこそ、本当にありがとうございます。

今回は私自身も観に行く予定だった公演が中止になってしまったし、中止期間とその前後は不安で辛くて悔しかったです。体験できて良かったと思うような経験では絶対にありません。二度とごめんです。
でも、この大千秋楽のおかげでネガティブなだけではない思い出になりました。

宝塚は夢の世界ですが、それを成立させているのはとても現実的な人間の努力や技術。
ジェンヌさんたち、作品を創る先生方やスタッフさんたち、オーケストラの皆さん、リアルタイムで公演を支える劇場スタッフの方々、劇団の責任者の方々、今回の千秋楽では特にスカイステージ関係者の方々も。
当たり前のように聞いてしまっていたジェンヌさんたちの舞台に立てることへの感謝は当たり前の言葉ではなく、たくさんの人の力がなければ観客である私はこの素晴らしいエンターテインメントを享受することができないのだと心から実感しました。

だいもんや真彩ちゃんのような素敵な舞台人がいる限り観劇を続けるつもりですが、今回のようなことはこの先もう起こらないかもしれません。
それでも、今回感じた感謝を胸に観劇に臨むのが 目に見える場所、見えない場所において全力で舞台を創っている方々への礼儀だと心に刻みます。

そして、良いときがあれば悪いときもある。いつも前に進もうという雪組の皆さんからのしなやかで強いメッセージも。

今の雪組が大好きです。

「CHESS」感想と「NOW!ZOOM ME!!」外部ゲスト出演について

ミュージカル「CHESS」を観劇しました。 「NOW!ZOOM ME!!」(これの略称は何が正解なんでしょうね?頭の中ではのーぞーみーって読んでるんですが、とりあえず以下のぞコンと表記します)とのセット販売でゲットした席だったので、隣の二人連れは「みりおちゃんが〜」って話してるし前列のお姉さんはデジマの先行画像を待ち受けにしてるし、周囲一帯の同志感がすごかったです。

今回観るまでストーリーも楽曲も全く知らず、英語での上演だったので事前にネタバレ込みでストーリーをチェックし(公式サイトに載っていてとてもありがたかった)、ナンバーもすべて聴いてから臨んだのですが、字幕を見ながらだとどうしてもパフォーマンスに集中できないので 内容を把握してから行って良かったなと。

ストーリーはざっくり説明すると
冷戦下の時代、チェスプレイヤーとその関係者が国同士(アメリカとソ連を中心とした東西関係)の政治的な立場に翻弄される
…というものなのですが、
・ほぼセリフがなくナンバーで構成されている
・チェスの試合を舞台上で行うシーンがあり、舞台中央の限られた空間だけでメインキャストが小さく動く時間が長め
という2点から、小劇場向けの作品だと感じたし コンサート形式で上演されることが多いということにも納得しました。
社会的背景やセリフで説明されない設定を映像で補っていたのはわかりやすくて良かったと思います。

あと、登場人物がみんな完璧な善人じゃない。
だからといって完全な悪人もいなくて、その人間らしさを味わうことに意味があると思うのですが (特に主人公に)共感しながら観るという楽しみ方はできないかな。
強いていうなら主人公アナトリーの妻、スヴェトラーナには共感しやすいかもしれません。ミス・サイゴンのエレンみたいな立ち位置なので。

個人的にはストーリーからカタルシスを得るのは難しかったのですが、多少モヤモヤする箇所があっても 楽曲とキャストの歌唱のハイレベルさに押し切られた感があります。
内容も良いに越したことはないけれど、こういう風に音楽でねじ伏せてくる力こそ私がミュージカルに求めているものなので(“ミュージカルに”であって“宝塚に”ではない)、全体的にはとても満足できる観劇でした。

ミス・サイゴンといえば、2幕冒頭のバンコクのシーンでこの作品を連想しました。女性ダンサーだけが踊るセクシーな振り付けとオリエンタリズム(オリエントを支配、威圧するための西洋の様式)を感じる歌詞。
終演後に男性グループが「あそこポリコレ的にどうなんだろうね」と話しているのを耳にしましたが、確かに現代の感覚に合わせてこういう描写を見直していく必要はありそうです。

さて、メインキャストについて。

ラミン・カリムルーさん
主人公アナトリー役。祖国ロシア(ソ連)に妻子がいるのに対戦相手のセカンドであるフローレンスと恋に落ち、共に亡命し…
この「そもそもあなたが倫理的にアウトじゃない?」っていう感覚、雪組ファンなら記憶に新しいはず。そう、我らがキャリエールさん。
妻子がいるのに出会ったばかりの女性と旅立ち、ラストは彼女と熱いキスしておきながら妻と国に帰るというね…ちょっとどうなの、と言いたくなるんですが、まあラミンですから。細かいことは気にせずその歌声にひれ伏しておけということでしょう。

私はオペラ座25周年公演の映像でラミンの歌声を初めて聴いて なんて素晴らしい俳優さん!と感激して以来、生で舞台を観てみたいと思っていて。
昨年エビータでも来日していましたがそちらには行けなかったので、今回が初でした。
(エビータ観に行った私の友人は、終演後シアターオーブ下のデパ地下で彼にたまたま会ってツーショットを撮ってもらったそうです。海外のファンにも気さくな方!)

初めて生で聴いた歌声は、声を張っても全く耳障りでなく綺麗に響くし、当たり前ですがすべての音域が完璧だし、魔法にかけられているような感覚で…掌握力が半端じゃなかった。
この作品はロックテイストで叫ぶように歌うナンバーが多くて、ゆったりしたメロディーで圧巻のロングトーンを響かせるラミンを堪能できなかったのは少し残念でしたが(Anthemはしっとりした美しい曲調で素晴らしいソロナンバーだけど、いかんせんちょっと短い…)これ以上望むのは欲張りすぎですね。
セット販売でとったのがのぞコンのラミン出演回なので、そこでまた彼の歌を聴けるのを楽しみにしています。

その外部ゲスト出演についてなのですが、発表の際から宝塚ファンの中でも色々な意見が飛び交っているような気がします。
今回のゲストがお二人とも男性ということで「女性のみ」という宝塚の前提は?とか、本当に外部ゲストが必要なのか?とか。

ただ、確実なのはだいもんも劇団もゲストお二人もこれらの意見は想定した上で出演が決まったことだと思います。
女性のみで構成される宝塚の唯一無二の価値や伝統は 妹さんがOGで他の現役生(だいもん)やOGとも共演経験が多い井上さんはもちろん、スカステでのだいもんとの対談やTCA PRESSのインタビューで真摯に語っていたラミンも理解しているはず。

ラミンの場合は、言語のハードルもある。これについては彼がインスタに投稿していた佐藤隆紀さんとのデュエット(レミゼのBring Him Home)をぜひ観ていただきたいです。
https://www.instagram.com/tv/B8LI0NyATgG/?igshid=1s7voo3nhfmbe

そして、この動画に添えられたメッセージを読めば彼のスタンスがわかるのではないでしょうか。以下に一部抜粋します↓
We decided to meet each other halfway with language and simply enjoy ourselves doing what we love.

元々井上さんもラミンも好きな私の意見が偏っているのは承知の上で、今回のゲスト出演を歓迎します。お二人とも色々なハードルを超えて、雪組さんとお互いに舞台人としてのリスペクトをもちながら音楽を通じた素晴らしい交流を見せてくれるのではと楽しみです。ラミンとの共演は以前からのだいもんの夢でもあるでしょうし。
とにかく今はだいもんがお二人の出演をリクエストし、劇団とお二人がそれを受けたという事実がすべて。これが宝塚の新しい可能性を開く結果となるのかそうでないのかという評価は、舞台や映像で実際に公演の様子を観てから下すべきだと思います。

サマンサ・バークスさん
アナトリーと恋に落ちるフローレンス役。
パワフルな歌声と高いピンヒールでも全く揺らがない美しい立ち姿、プロだなあと。
少し硬質な歌声がよく通って、男性4人に彼女1人みたいなナンバーでも数に負けていなくて素晴らしかったです。

ルーク・ウォルシュさん
アナトリーと対戦するアメリカのプレイヤー、フレディ役。
ただの傲慢で偉そうな奴かと思いきやそうではなく…という彼のバックボーンがわかるソロ、Pity The Childがすごかったです。ラミンの深みある低音と対照的な 突き抜けるような高音が圧巻でした。

佐藤隆紀さん
上述のラミンのデュエットのお相手、シュガーさん。試合の審判、アービター役でストーリーテラーのような役どころでした。
東宝エリザの映像(2016 White ver.)を観たとき メインキャストでは佐藤フランツと涼風ゾフィーの歌唱が抜きん出ていると感激したのですが、今回も海外のスターに負けず実力を発揮されていました。
ふくよかな美声も含め、とても好きな俳優さんです。

他のキャストもアンサンブルまでしっかり歌える方ばかりで、ストレスなく楽しめました。素晴らしかった!

雪組全ツ「Music Revolution!」感想

遅ればせながら、ショーの感想。 真彩ちゃん登場シーンは彼女だけを追っていたので、全体的に内容が薄いです🙇‍♀️

プロローグ
スポットライトが点いたらだいもん一人だけがいるあの画は、かっこよすぎて反則ですよね。しかも初っ端の「Ah〜」があまりに圧倒的で、だいもんから発せられる音の波動が客席に広がっていくようなイメージが脳内に浮かぶんですけど皆さんもそんなことある?  
この開始数十秒でチケット代の元がとれるのに、ここから麗しき雪組の皆さんが登場してクールに歌い踊ってくれちゃうからこのショーが大好きです。

全ツでは真彩ちゃんの鬘がポスターと同じボブになっていて、かっこいいと可愛いのハイブリッドって感じでときめきました…真彩ちゃん最高だー!相変わらず遠慮なくキザってくれますし。
ご本人もこういう振り付けやってて楽しいんだろうな、と感じるキレの良さで実に男前!

Love Revolution! Ⅱ
あーさとひらめちゃんのデュエット。あーさの歌い方がお芝居とはガラッと変わって、爽やかかつ適度に力が抜けて余裕を漂わせているのが好きです。これは先輩って呼びたくなる朝美絢…
対するひらめちゃんも存分に娘役芸を発揮したキュートさ!ダンスも歌声も全く危なげなく、本当に雪組を去ってしまったのが惜しまれてなりません。

革命と独立
この場面、真彩ちゃんはただ踊るだけでなく表情でストーリーを伝えてくれていました。
東宝で観たときは全身で音楽を感じて楽しんでいるなという印象でしたが、全ツではさらに先に進んで音楽と一体になっているようなレベルで動きが滑らかかつ美しかったです。

Jazz Sensation!
アダルティーな空気も漂わせていた咲ちゃんに対し、あやなちゃんからは溌剌とした若いパワーを感じました。あんなに踊り狂いながら途中でかなり難度の高いソロが入るのでとても大変だと思いますが、健闘していました!
あゆみお姉様とひーこさんという雪組が誇る娘役ダンサーの大活躍が嬉しい場面。かっこいい娘役大好きマンとしては、娘役さんたちのハット姿が見られるのも至福です!

Classic World
まずだいきほ二人だけの場面、二人の間の空気感がすごく自然で それだけトップコンビとして同じ時間を共有して一緒に高め合ってきたんだなとしみじみ。フリーダムなだいもんのトークに絶妙なタイミングで入る真彩ちゃんの合いの手が楽しい。

1階席だったので、中詰めではジェンヌさんが本当に近くまで来てくださいました🙏 私はほぼ最後方だったのですが、りーしゃさんとひらめちゃんを近くで拝見することができて、リアルフェアリー感にうっとり…お二人とも本来の持ち場を越えて後ろまで来てくださり、ありがたい限りです(さすがにこのときは舞台上に集中していられなかったので、だいきほあーさひとこちゃんのジェスチャーゲームは見逃しました)。

Dance Revolution!
この場面、夏に観たときも素敵でしたがさらに安定感があったように思います。
ひとこちゃんの雪組での集大成…爽やかでキラキラ輝いていて、ザ・スターさんだなという素晴らしい才能。花組でのますますの活躍を楽しみにしています。
私が東宝で観劇した日は偶然ひとこちゃんのお誕生日で このシーンでもパレードでも一際大きな拍手が送られていましたがこの全ツの日も同じくらい反応が大きく、客席全体が私と同じ思いなんだろうなとしんみりしてしまいました…

Music is My Life
大好きな場面。人数が減っても変わらないパワーで雪組のコーラスの質の高さを改めて感じました。
だいもんとペアルックな真彩ちゃんがとにかくキラキラしていて、雪組のプリンセス感がすごかったです。本当に幸せそうな顔をしているので、見ているだけでこっちも幸せいっぱいになります☺️
あと、真彩ちゃんの「Music is My Life♪」と歌うソロが始まるところで音楽が転調(たぶんB Dur→Des Dur)するのがすごく好き。

フィナーレ
あみちゃん&みちるちゃん、ひとこちゃんのSuch A Night。歌詞の内容的に年上の女の子を追いかけているようなイメージなので、壬生新公主演コンビでもある二人は雰囲気に合っているなと感じました。後半一人で登場するひとこちゃんはさすがの余裕で素敵!

ロケットの後は娘役さんたちのシーン。ガラッと変わったヘアスタイルといい、かちゃさんが抜けた部分に加わったスキャットといい、とにかく真彩ちゃん最強でした。特にスキャットが天才。
葛藤と焦燥みたいな絶唱から色っぽく抜け感のあるこういう歌い方まで、何でもバッチリはまるのが彼女が音楽の天使たる所以ですね。

続いてティコティコで男役群舞→歌い継ぎ。正直なところ、東宝で観たときはなんでこの選曲なんだろうと思いました。群舞で使うのはまだわかる、冒頭のソロはだいもんの無敵の滑舌と歌声でねじ伏せてた。でも数人で歌うと細かいリズムや歌詞は圧倒的に伝わりづらいし、ソロもだいもんのように明確に歌うのはかなりハードルが高いんだなと感じたからです。 しかし、全ツではこのようなマイナスな点をあまり感じませんでした。大劇場、東宝から公演を続けてきた慣れももちろんあるのでしょうし歌っているメンバーやパートが変わったこともあると思いますが、発声自体が全体的にレベルアップしているなという印象を受けました。
特にソロを歌うあーさとひとこちゃん、だいもんほどの余裕はさすがになくてもちゃんとこの難曲をねじ伏せられていたと思います。皆さんの努力に拍手!

そしてパレード。
ファントムで素晴らしいソロを披露して賞賛を集めていた有栖妃華ちゃんが初のエトワール!個人的に早くエトやらないかなと楽しみにしていたので本当に嬉しかったです。
大劇場・東宝版とは少しメロディーも変わり、最後のハイトーンhihiAがとにかくスパーンと綺麗に響いているのが心地よかった!やはりさすがの歌声で高音域は申し分ないなと。
一方、お芝居でも舞踏会のシーンでソロを歌っていましたが、そちらを聞いて低〜中音域はやや弱いのかなと感じたので(逆に大劇場・東宝でエトを務めていた羽織夕夏ちゃんはこの音域の方が得意な印象)どの音域でも自在に歌えるようになったら完璧だと思います。ワンスでもエトに選ばれることを期待しています!

咲ちゃん主演の全ツでも再演されることが決まり、雪組生との付き合いが長くなるこのショー。次は内容もかなり変わるような気がしますが、そちらも楽しみにしています!

雪組「はばたけ黄金の翼よ」感想

雪組@少女漫画、だいきほ@ラブストーリー。
初日からいろんな方の興奮気味のレポを見ましたが、期待を裏切らない…どころか、想像を超えてくる作品でした!

望海風斗さん
私が大好きな見下されたい系のだいもん!スチール公開ですでにやられかけていましたが、この目で拝んで完膚なきまでに叩きのめされました!幸せ!!
真彩ちゃんもそうですが、だいもんは役柄によっていろんな声を作ってくるので 第一声で人物の人となりが伝わってくるのが素晴らしいなと思います。
前回は家族への忠義に生きた田舎侍の声だったのに、今回は生まれながらの領主なのでギャップがすごい。でもどっちも好き!だいもんのドスのきいた声たまらん…まさにリアル男性より男。「ユアマジェスティ」って跪きたい(ヴィットリオ様はイタリア人だけど)
ちょくちょくドンジュアンを思い出させる要素があるのも好きです。黒髪長髪のだいもん〜🥰

冒頭のシーンからマント似合いすぎ問題!プログラムに載ってるお稽古場の写真もびっくりするぐらいカッコ良いし…
深い霧の十字路で出会うヴィットリオとクラリーチェ。
だいもんと真彩ちゃんが歌い始めて二人の声が重なった瞬間に「ああ私はこれを聴く為に来たんだな」と幸せを味わう瞬間は、何度体験しても慣れないと思います。

そしてアラドーロチームが華やかに勢揃いするシーン、背景の電飾がこれぞタカラヅカ!というギラギラ具合でびっくりしましたが、ヴィットリオのお衣装もそれに負けない全身金色。 これを着て違和感ないだいもんはやはりスター✨

この後かな?セリフを言いつつファルコの肩を軽く叩いていたのですが、劇中で二人の過去は描かれていないのに その一瞬の動作に込められたニュアンスだけで「ファルコは幼い頃から共に育ってきたヴィットリオの影」という設定が腑に落ちてしまうのはさすがでした。

で…例のあのシーンですね。恐らく興奮と謎の緊張のためでしょう、あまりはっきり覚えていません。
でも、「それとも、醜いぶたのような人っ!?😠」からの高笑いでヴィットリオ様ー!と目を向けたらまだ登場されていなかったこと、ベッドに片膝ついてクラリーチェに迫る構図がとんでもなかったことは脳内に残っています…

世継ぎの剣を渡して「イル・ラーゴ一(いち)の剣の使い手を差し向ける」と一方的に剣術の稽古を申し渡すセリフ、自分の名前を出さなかったのは
・自分が行くと言うとクラリーチェが来ないのではないかと懸念した
・驚かせたい悪戯心 のどちらなのか、ヴィットリオ様のお心やいかに。
どちらにせよこの時点ではクラリーチェに惹かれていることを自覚してなさそうなのがね、とっても良いですね。

湖畔でクラリーチェの稽古をするシーンは、これぞだいきほ!という感じで最高でしたね。
あと、稽古前のお国自慢が本当に南部讃歌アゲインだった。さっきまであんなに不遜な態度だったのに…と思うほど美しい自分の国を賛美する口調が素直で、実は純粋な人なんだなと不意打ちでキュンとしたのですがクラリーチェもそうだと思う。
ひかりふるではマリーアンヌの二刀流に茫然自失で為すすべなしでしたが、ヴィットリオ様は大丈夫(笑) クラリーチェの剣を余裕でいなして熱血指導。
だいもんすごく細いし真彩ちゃんとの身長差もあまりないのに、セリフ通り体格差があるように感じるのはどんな魔法なのでしょう…

そして、ファルコたちに攫われたクラリーチェを救う為ロドミアと対峙するシーン(展開が意外と早くて少しびっくりしました笑)。
解毒剤は世継ぎの剣と引き換えだと言われて自らクラリーチェを手にかけようとしますが、ロドミアに言われて初めてクラリーチェへの思いを自覚するのですね。
最初にクラリーチェに剣を向けたのは、「俺の意思を道具にするな」というよりも他人に彼女を殺されるよりは自分で…という重めな感情なのかなと考えたりしたのですが、どうなんでしょう。1回の観劇で考察するのはなかなか難しいです…
何はともあれ、目を覚ましたクラリーチェを抱きしめるヴィットリオ様の包容力が最高でした!ときめきをありがとう!!
そしてファルコに対してはクラリーチェの命乞いを受け入れたものの、追放して身内は皆殺しという重い処分。自分の為に誰かが殺されるなんて嫌というクラリーチェの思いには一理あっても、ヴィットリオは知恵と才覚、帝王学を身につけた一国の領主ですからその判断は冷静ですね(実際、その後ファルコはヴィットリオと敵対するジュリオと手を組むわけですし)。
この一連の流れでヴィットリオが浮かべている厳しい表情が それまでのファルコとの関係の深さを物語っているように思います。

ジュリオたちが陰謀を企てたボルツァーノへの招待、あっさりその狙いを見破って騒ぎを起こせないよう教皇を招くヴィットリオ様の余裕!好き!
そのくせに里帰りしたクラリーチェが喜んでると😒って不満げになるのは何!?最高か?
挙句他の人と踊ってるクラリーチェを強引に引き剥がして踊り始めるし…最高だ!
かつて「領主は愛されても愛してはならない」とか言ってたのが信じられないくらいの独占欲ダダ漏れっぷりににやけるしかない。

そして、罠だと知りつつクラリーチェの誘い通りに古城を訪れるヴィットリオ。彼女が自主的にやったわけではないけど自分の愛情を弄ばれている状況に変わりはないわけで、「一番お前の為を考えているのは俺だということがわからないのか」には苛立ちだけでなく悲しみも混じっているんだろうなあ。
裏の裏をかかれて四面楚歌になってもジュリオたちに負けなかったのに、クラリーチェの為に剣を捨てるってもう…愛が大きすぎる…
だいきほの作品って
だいもん→→→←←真彩ちゃん
みたいなのが多いけど、今回に至っては(この時点では)
だいもん➡︎➡︎➡︎➡︎➡︎←←←真彩ちゃん
ぐらいな勢いでは? はあヴィットリオ様すき…

そしていよいよ待望の(?)片目を潰され鞭打たれるだいもん。こんなに偉そうな(笑)役なのに痛めつけられるのが似合うってどういうことなのと思いますが、大劇場お披露目から何度も苦悶し舞台に蹲ってきたトップスターは伊達じゃない。

男装クラリーチェに救出されたヴィットリオ。 満身創痍にもかかわらずジュリオとの決闘に挑みますが、ただでさえ立ち回りが大変なのに傷を負っていて思うように動けない状態もちゃんと伝わってきてさすがです!普通に動くより疲れるのではないでしょうか…
全ツのハードスケジュールの中、ショーも含めこれだけ体力を使う公演をこなしつつ早朝から観光までしてしまうだいもんのタフさと情熱に改めて感服しながら観ておりました。
あと眼帯姿がかっこよすぎる。

このシーンはロドミアとのやりとりも印象的で…この作品は、単純に二人が結ばれてハッピー☆ではなくヴィットリオ中心に様々な人物の濃い関係が描かれているところが好きです。

ラストシーン。自分の元から去ろうとするクラリーチェへの思いをどストレートに歌い上げるヴィットリオ様がときめきの限界値を突破してくる…
だいもんの心に響く歌声があるからこそ、この1回の「ああ君を愛す」の破壊力が凄まじいです。

出会ったばかりの頃は自分の意志をもったクラリーチェに惹かれつつ「女は男に守られているのが一番の幸せ」と断言していたヴィットリオが、最後には「自由な女のお前が欲しい」と言う。
牢獄に捕らわれているシーンで「心は自由だ」とクラリーチェを思うセリフがありましたが、そのときに彼女を一方的にそばに置いて愛情を与えるのではなく 彼女が自ら自分を選ぶことを望むと決めたのかも。

クラリーチェに思いの丈を伝えて背を向けた後ろ姿の美しさ、自分と共にいることを決めた彼女への眼差しの優しさ、キスシーンの甘さ!(ついにキスで幕が降りるだいきほ作品が誕生🙏)

最初から最後までひたすらかっこよくて素敵なだいもんを見られて幸せでした!こんなのを見せられたら我々はヴィットリオ様に恋せずにはいられない…

真彩希帆さん
可愛らしくも、地に足つき自分の意志をもつクラリーチェ。ついに真彩ちゃんが少女漫画のヒロインに!

「誰かを助けようと思う、誰かを愛することができる…そんな人は誰だってヒーローなのよ」という食聖のセリフが反響を呼んでいたように思いますが、この作品のクラリーチェ像からもそれに通じる小柳先生のメッセージを感じましたし、現代の感覚に合ったヒロインだと思います。

自分を曲げないクラリーチェを子どもだと思う観客もいるかもしれないけど、実際身分の高さゆえの誇りや育ちの良さはあってもヴィットリオと比べると彼女は世間知らずの子ども。
それにもかかわらず母と共に父から引き離され、その父を殺した男に嫁ぐという波乱の運命なわけですから、自分の気持ちをぶつけたり時には全身でぶつかっていったりすることで必死に相手に向き合うしかないのだと思います。
そんな彼女の素直さや健気さは一歩間違えればかわいこぶっているように見えてしまうと思いますが、そうではなく心が動くままお芝居をしたらキュートで魅力的に見える、という課題を真彩ちゃんはきっちりクリアしていたと思います。

何よりだいもん同様 役としての声がパーフェクト!あれだけ地声と違う高い声で自然に明確にセリフが言えるのは本当にすごい。
真彩シャロンの艶やかで大人っぽい声が大好きなのですが、その対極にあるクラリーチェの声も大好きです。とにかくかわいい!
クラリーチェの素直さは言動だけでなく顔にも出ていて、私が真彩ちゃんの大きな魅力だと思っているクルクル変わる表情が堪能できて嬉しかったです。

冒頭のシーン、修道院から逃げてきて行くあてもないけれど「私の道は私が決めるわ!」と迷いなく言うクラリーチェの声が凛と澄んでいて綺麗で、この一言にヴィットリオがはっとなるのもうなずけます。
私は真彩ちゃんのシシィが観たいとはあまり思っていないのですが(だいきほの私が踊る時は聴きたい)、「私を帰して!」を真彩ちゃんが言ったらこんな感じなのかなとふと思いました。

次にクラリーチェが登場するのは、既にイル・ラーゴに嫁いだ後。結婚式のシーンないのかと少し残念でした笑
「見知らぬ国の…」と不安げに歌う声が清らかで美しい!曲がそんなに多くない作品ですが、ちゃんと真彩ちゃんのソロがあって嬉しいです。

そしてヴィットリオが登場してからは手のひらで転がされてるのがひたすら可愛い。本人は怯えたり怒ったり大変な目に遭っているのにこちらはニヤニヤしていて申し訳ないのですが、ただただ可愛い(語彙力…)。

剣のお稽古は真彩ちゃんの本領発揮ですね笑
最初のダメダメな剣さばきがすごく可愛いけど、ヴィットリオに喝を入れられた後急にレベルアップするので笑いそうになってしまいました。さすがだぜ我らが真彩希帆嬢…
「最後まで諦めるな」というヴィットリオの言葉や、茶化すのではなく真剣に自分と向き合う彼の姿勢でそれまでの印象をかなり覆されたのでしょうね。
ロドミアとの関係をほのめかされていきなり「嫉妬することなんてないわ」まで気持ちが発展してるんだもん、ほんとに素直だなあ…。 そしてファルコたちにさらわれた後助け出してくれ、本気で自分を案じるヴィットリオを目にしたことでさらに心動かされ。

そこからのボルツァーノでの舞踏会が本当に最高でした!
このときの赤いドレスめちゃくちゃ可愛いし、色んな男の人に次々ダンスに誘われるのも「そうだよねー可愛いもんね」って感じなのですが、それ以上にヴィットリオとのダンスの破壊力が…
好き勝手に回されながら、ヴィットリオが他の方向を向いてるときもじっと顔を見つめてたりするのです。クラリーチェ完全にときめいちゃってる!

だからこそジュリオから計画を持ちかけられたときに葛藤してしまうんですね。ヴィットリオは確かに兄妹の仇だけど彼の優しさに気づいてしまった、という板挟み。
兄に騙されたことを知り、自分が命を救ったファルコに再び襲われ、自分を救う為にヴィットリオが捕らわれてしまう…このときヴィットリオよりクラリーチェのほうが傷ついていたのかも。
それと同時に、誰にも負けなかったヴィットリオが自分一人の為に剣を捨てたことできっと完全に彼に堕ちた(もしくはそれ以前から堕ちていたことに気づいた)のかなと思います。
自分だって最初はヴィットリオを殺そうとしていたのだからジュリオが命拾いさせてやるはずはないと思い至らなかったのは確かに甘かったかもしれませんが、彼女はあまりに純粋だから仕方ないとも思ってしまう…(真彩ちゃんに関してはモンペ気味)

幽閉され自害しようとしたところで、「最後まで諦めるな」という言葉が脳裏によぎり踏みとどまるクラリーチェ。ジュリオたちの狙いである世継ぎの剣を守らなければという使命も思い出したのでしょう。
ファルコに助けられ、男装してヴィットリオを救出するために髪をばっさり切るのですが舞台写真にこのシーンがあるのが嬉しい。
真彩希帆さまの男装が実現した世界!ありがとう小柳先生!!!

無事にヴィットリオの元にたどり着いて彼を解放するクラリーチェ。
持っていた宝石と子どもの服を取り替えてもらって変装したと言っていたけど、ヴィットリオは「明らかに価値が釣り合わないだろ、本当に世間知らずだな」と内心思いながら安堵と喜びでいっぱいなんだろうなと勝手に想像してときめいていました笑

城を脱出するとヴィットリオからのお使いをするために酒場に行くのですが、そんなキュートなルックスで一人称「ぼく」は反則です…しかもcv真彩ちゃんですからね、破壊力大きすぎる。
ここでのロドミアとのやりとりが素敵だった。いろいろ辛い経験をして二人とも成長しているし、こういう娘役さん同士の(友情というのもふさわしくないような複雑な)関係は珍しい気がするので嬉しいです。

そしてやっとハッピーエンド、と思いきや素直にヴィットリオの元に戻ろうとしないのがクラリーチェ。
確かに彼を愛しているけれど、他人が決めた縁談に流され彼の愛にすがる女(愛を求めて鳴く犬)になるのではなく 自由な意思で彼と生きることを決める女(空を翔ける小さな鳥)でありたい、と言える彼女が好きです。
「あたしは自分がしたいようにするの」と語るシャロンに始まり、真彩ちゃんがこういう芯の強い役を多く演じているのがファンとしては嬉しい。

ザ・少女漫画な可愛らしさや素直さと憧れてしまう強さを兼ね備えたクラリーチェに魅了されました。
観劇が叶わなかった真彩ちゃんファンの方はぜひ映像で骨抜きにされてください!

朝美絢さん
伝説のサンジュストを彷彿とさせる、だいもんへの愛が重すぎる系あーさ。この時点で圧勝です、おめでとうございます(?)

なんであーさのこういうお役がみんな大好きなのかというと、「こんなに美しい人が思い通りにならない想いを抱えて苦悩している」という萌えなのかなと勝手に分析しています。
でもおそらくそれだけではなく、きっちりと考察し役に真摯に向き合っているからこそさらに魅力的に見えるのでは。

とはいえ、トートみたいな銀髪ストレートのカツラって目立つはずなのにお顔が美しすぎてそこまでインパクトを感じなかったからやっぱりあーさの顔面はつよい。

とにかくヴィットリオを見る目から愛がダダ漏れなのですが、クラリーチェと二人きりにすることに抵抗ありすぎでは?人払いされたのに、絶対部屋の扉に耳あてて様子伺ってたと思う笑
愛されても愛してはならないというのは領主のポリシーとしては一理あると思うし クラリーチェと結婚したのはボルツァーノ征服のためと言った時点ではヴィットリオもそれを疑っていなかったと思うけど、自分が知らない間に大切な世継ぎの剣がクラリーチェの元に渡ってるんだからそりゃあ大ショックですよね。
この剣はファルコにとって、敬愛するヴィットリオによる統治の象徴だったのかも。

この作品は主役二人の出番がとにかく多くてその他の人たちは幕前でのお芝居が目立ってしまっていましたが、その中で観客を引き込むあーさの力はすごいなと実感しました。特に印象的だったのがやはりヴィットリオのためにソング。
歌詞の大半が「ヴィットリオのために」だし幕前で歌わないといけないし、これをちゃんと聴かせるのは至難の業だと思いますが素晴らしかった。

まず声量がだいきほと並んで圧倒的に大きいことにびっくり。ボリュームをコントロールした方が発声もコントロールしやすいわけですから、声量があるということは守りに入らずに歌える技量があるということ。
私は男役さんの歌のレベルを判断するときhiA〜hiBという地声と裏声の境界となる音域を聞くのですが、この曲の最高音hiB♭がまさにこの音域。あーさは出しやすい低音域と同じ響きを保って歌っていて、これは文句なしに“上手い”レベルといえるなと感じました。
もちろん感情の込め方も申し分なく、「あらゆる音域を難しさを感じさせず自由自在に歌いこなす」だいきほのレベルにも近づいていくのではという期待でいっぱいです。
次回の大劇場公演では女役ですが歌姫設定のためソロを与えられるのではと予想していますが、アチア氏に賞賛されたCASANOVAの鳳月さんのように私たちの度肝を抜く歌声を聴かせてくれると確信しています。

さて、クラリーチェ殺害を謀ったことがバレてヴィットリオの前に引き出されたファルコ氏。 この時点ではまだヴィットリオが自分の考えを(多少なりとも)理解していると信じていたように見えましたが、結局死を命じられ…
ここでファルコは初めてヴィットリオへの憎しみを抱いたのかなと思います。まさに可愛さ余って憎さ百倍。
クラリーチェに命を救われても、それよりヴィットリオの方に感情が向いてしまっているような…影と呼ばれるほどずーっと一緒に過ごしてきた関係なので、反動が大きいのは当然なのですが。
愛情にしろ憎しみにしろひたすらヴィットリオを思っていることに違いはなく、追放されてもその状態から抜け出せなかったからジュリオの誘いにあっさりのってしまったんですね。

そしてヴィットリオがジュリオたちに嵌められ、再び彼の前に現れたとき。目を斬りつける動きは一瞬でしたが、それまで蓄積されてきた感情が爆発した迫力がすごかったです…
初演ではファルコが鞭打ち、ジュリオが失明させるという役割で 初日までファンの皆さま同様私も「あーさがだいもんを鞭で打つのか…☺️」(←どんなテンション)とワクワクしていたのですが、逆でも全く違和感なかった!どころかむしろ初演ではどうやってその流れになったんだ?と思うほど自然でした。
それに、鞭でできた傷はいずれなくなる(現にヴィットリオさまは直後に決闘してた)けど奪われた目は元に戻らないわけで、一生残る痕跡を残すほうがファルコに相応しいと感じました。

でも、やっぱりヴィットリオを憎みきれなかったファルコは「ヴィットリオのために」クラリーチェを救出。
ジャンヌへのあの言伝は反則、それは「忘れるな」と同義です。

数年後、ヴィットリオがスペインに有能な傭兵がいると噂を聞いてその兵を招聘し、「やはりお前だと思っていた、お前は俺の影だからな」って再会するスピンオフください😊😊😊

永久輝せあさん
グリエルモ伯爵に操られていいように使われてしまうジュリオさん。金髪王子様ビジュアルでヒロインのお兄さんなひとこちゃんって完璧すぎる👏

公演評で「人がいい」って表現しているものもありましたが、個人的にはそれは少し違うなと感じました。本当に人がよかったら人質だとわかっていてクラリーチェをイル・ラーゴに送ることも彼女を騙してヴィットリオを殺そうとすることもないのでは?確かに良心の呵責はおぼえていたけど、単に周りに流されやすい人なのかなという印象。
そこがグリエルモ伯爵に「領主の器ではない」と言われてしまうポイントだと思うし ヴィットリオなら陰謀も策略も涼しい顔でやってのけるんでしょうけど、逆にこの素直な人柄こそがジュリオの魅力だと感じました。なんだかんだで兄妹ですから、クラリーチェと似たものも感じる。
(とはいえ、恋人のビアンカちゃんをあんな形で利用するのはアウトよ…洞察力のあるヴィットリオさまのことですから、裏があるのを見抜いて手を出してないと信じていますが。そもそも、スパイだらけの敵国でそんな隙を見せるなんて有り得ないと思うし)

出番がぶつ切りだし難しい役だと思いますが、見た目正統派プリンスなのに中身にはギャップがある、という役をひとこちゃんで見られるのは新鮮な気がして楽しかったです。
ヴィットリオとの立ち回りも見応えがありました!

朝月希和さん
お兄さんのファルコに似て激情型のロドミア、ひらめちゃんが素晴らしく魅せてくれました。

登場するなりクラリーチェへの嫉妬に燃えているけどその裏にはヴィットリオへの愛があって、それが軽薄なものではないからただの意地悪な女性には見えないんですよね。
クラリーチェを殺すこともできたのに 彼女に剣を向けたヴィットリオを止めた彼女の行動は、後にクラリーチェのために剣を捨てた彼に重なるような…
ヴィットリオ自身よりも早く彼のクラリーチェへの思いを悟っていたのも、彼を愛しているからこそ。
兄と共にイル・ラーゴから追放されても ヴィットリオの近くにいたいと望む健気さに泣ける😭

酒場でのソロも素晴らしくて、本当にひらめちゃんの雪組での集大成なんだなとしみじみしてしまいました。
何よりこの後!男装して教皇に密書を渡そうと忍びこんだクラリーチェのため、咄嗟に芝居をうつ姿に惚れずにはいられません。
姉ひらめちゃんに弟真彩ちゃんってどんなパラダイス🙏

そして最後は決闘に臨んだヴィットリオをグリエルモ伯爵の陰謀から守るため、その身を犠牲に…
どこまでも「ヴィットリオのために生きる」姿はもしかしたら兄ファルコより純粋なものだったかもしれません。美しく誇り高く、クラリーチェに負けないくらいひらめちゃんのロドミアはヒロインでした。

そして、考えてしまったことが一つ。
私はこれまで ドンジュアンを再演するとしたら、特に初演キャストのハードルが高いのは騎士団長(香綾さん)とエルヴィラ(有沙さん)だと思っていました(もちろんだいもん主演での再演が前提です)。
でも、この役を観てしまったら前言撤回するしかありません。ひらめちゃんのエルヴィラが観たい!
まあ、ひらめちゃんが花組に行ってしまった今は叶わぬ夢なんでしょうけど…

その他のキャスト
奏乃はるとさん
組長にわさん!頼れる教皇役、登場しただけで安心感と安定感がすごかった。お忍びで酒場に行ってしまうお茶目さも🙆‍♀️

久城あすさん
普段あんなに優しそうなお顔なのに、見本のような悪役も素敵でした。安定感のある歌声で雪組を支えてくれている彼女ですが、歌なしのお芝居だけでも素晴らしいバイプレイヤー。

綾凰華さん、彩海せらさん
アラドーロチームの側近コンビ、可愛らしかった!今回はあまり目立った出番がなかったけど、ワンスではガラッと雰囲気を変えてクールな姿を見せてくれるのかなと楽しみです。

彩みちるさん、星南のぞみさん
今回はこのお二人をはじめ娘役さんにも名前ある役が結構振られていて、娘役好きとしては嬉しかった!それぞれに愛する人を思う姿が素敵でした。

ザ・タカラヅカ大芝居で逆に新鮮な印象の作品。振り返ってみるといろいろあれ?と思うポイントもありますが、そこも脳内補完したり突っ込んだりという楽しみ方ができるし、舞台から放出されるときめきの方が大きくて多幸感がすごかったです!
初めて映像化されるだいきほのハッピーエンドなので、何度も見返してキュンキュンさせていただく所存☺️
ミュージカルから日本物、果ては少女漫画まで…今の雪組さんならどんな作品でも心から楽しめるクオリティー高いものを見せてくれる、という安心感が何より幸せだと感じます。次回公演でも見たことがない魅力を届けてくれるはず!楽しみです!!

羽生結弦選手と望海風斗さんの共通点

スケカナでの羽生さんの神演技が麻薬すぎてすっかり中毒になり、だいもんのGIFT発売とその曲目の素晴らしさに歓喜し、今週末に迫った全ツ観劇にそわそわし…とテンションが振り切れてしまったので、前から書こうと思っていたことを記事にしてみます。

強く麗しい史上最高のスケーター羽生さん芸術の神に愛され舞台人として天賦の才を備えただいもん

大好きなお二人ですが、(私にとってはこの上なく幸せなことに)だいもんが羽生さんのファンということもあり、お二人の相通じるところが目につくことが多いです。

なので、そんな共通点を挙げてみる…という名目のもと、お二人について語ってみようと思います!

 

1.子どもの頃からの憧れの存在

羽生さん→エフゲニー・プルシェンコ

だいもん→天海祐希さん

もちろんジョニー・ウィアー氏、大和悠河さんなど尊敬する先輩として名前が挙がっている方は他にもいますが、やっぱりこのお二人。羽生さんもだいもんも、とにかく熱量がすごいしエピソードもド級ですよねえ。

 

羽生さんが幼少期にプル様の髪型を真似してた(かわいい)のはあまりにも有名ですが、優勝した大会でプル様みたいにメダルを掲げてみたり(かわいい)ひたすらその背中を追ってきたんだなあと。

最初で最後の競演となったソチ五輪団体戦のSPでは羽生さん1位、プル様2位で憧れのヒーローに勝利。

個人戦の本番直前にケガしてしまったプル様は「今では彼(羽生さん)が私のーロー」という言葉を残して棄権し、羽生さんは五輪初出場で金メダルという少年ジャンプ顔負けの展開に。

その後もリスペクトは留まることを知らず、ついにプル様の伝説のプログラムと同じ曲でプログラムを作ってしまうほど(昨季から滑っているOrigin)。今ではプル様のご子息サーシャくんが羽生ファンという尊すぎる関係…羽生さんのプル様愛と努力と才能が生んだ奇跡のような物語です🙏

 

そしてだいもんも負けてない!天海さん関連のエピソードといえばやっぱり伝説の「天海さんもそんなことある?」日記(笑)

このフレーズが大劇場お披露目のショーで歌詞になるとか、もう誰にも越えられないレベルだと思う…

天海さんが出演されている舞台をだいもんが観に来てたっていう目撃情報も見ますし、本当に今も大好きで憧れの存在なんですね。

GIFTにも真彩ちゃんとデュエットする「今なら言える」はじめ天海さんが宝塚時代に歌われた曲が何曲も入っていて、熱い思いが伝わってきます。伝説の名盤になるんだろうなと今から楽しみでなりません。

だいもんが現役のジェンヌさんだからこその制約もあるでしょうし、残念ながら公の場でのお二人の絡みはまだないと思いますがそれこそ天海さんの舞台を観劇したとき楽屋でご挨拶とかしてるのでしょうか?

いつかお二人の対談を見てみたいものです。

 

こうしてエピソードを見てみると、お二人とも文句なしにオタク気質ですよね笑

でもだからこそ私たちファンの気持ちをよく分かってくれているなと思うことが度々。

そして、今度はお二人に憧れる若い才能が現在進行形で生まれているんだろうなと思うと本当に胸熱です!

 

2.有言実行

羽生さんが幼少期にローカル番組で「めざせ、おりんぴっくきんまだるです!」(金メダルって言えてないよ〜かわいいね)って言ってる映像が時々流れますが、これを2回も実現してしまったのが本当にすごい。

世界のトップに立った今でも「これから神る!」と言えば本当に神るし、羽生さんがインタビューや会見で語る言葉には常に本気が宿っています。

思えば、彼はずっと有言実行を積み重ねて史上最高と称される今日にたどり着いたんですね。

 

だいもんも学生時代の卒業アルバムにタカラジェンヌとして羽根を背負って全国を周る夢を記していたそうですが、見事に叶えましたね!しかもトップ就任後は全ツ組になることが多く、今回で既に3回目😳

あとはだいもんと相手役・真彩ちゃんを語る上で欠かせない、ファントム上演に関するエピソード。まだお二人が花組にいた頃口に出した夢が叶った作品でした。

 

自分の思いを言葉にする強い気持ちとその実現の為に努力する力をもっている人は本当に夢を叶えることができるんですね。

私たちが想像できないような高みを目指しているであろうお二人、これからもその軌跡を応援していきたいです。

 

3.生業への愛

羽生さんは稀有な才能の持ち主なだけでなく、フィギュアスケートへの愛も一級品です。

自分と同じシニアの男子選手の演技を観るのはもちろん、ジュニアや女子の動向も隈なくチェックする徹底ぶり。

研究して自分の演技に反映させる目的もあるでしょうが、単純にフィギュア大好きなんだなあと感じます。

あと、(本人は公言していないけれどおそらく間違いなく)ファンのツイートを見てマニアックな知識を収集していたり。

競技中は曲調に合わせて表情も作っているけれど、時々心底楽しそうな素の笑顔で滑っているときは「天使…🙏」と思いながらこちらも幸せをもらっています。

そんな彼は「世界一スケートが上手いスケオタ」と呼ばれていますが、だいもんにも同じものを感じる!

 

天海さんのエピソードなどからもだいもんがファン時代から宝塚への熱い愛を抱いていたことが伝わってきますが、自ら劇団の一員となった今はますますその愛が増しているのではないかなと思っています。

パレードでの笑顔が心から幸せそうですし、歌劇やGRAPHのエピソードからもタカラジェンヌとして、トップスターとしての日々を全力で楽しんでいるのが窺えます。

それに、多忙なトップさんなのにスカステ登場率がすごく高い

キャトルの宣伝部長として素晴らしい活躍を見せていますし、今度は動画配信サービスの紹介番組にも登場!

自身のブリドリでの宝塚愛溢れる企画も、咲ちゃんのブリドリで語りまくったために字幕付きで早送りにされていたのも忘れられません笑

ここまで来たら、真彩ちゃんと宝塚縛りでカラオケする特番やろう?


4.表現者としてのあり方

私がお二人のファンである最大の理由がこれ。以前雪組ファントムについての記事でも載せたのですが、平昌オリンピック後の羽生さんのこの言葉がすべてを集約してくれています。

 

「芸術、バレエとか、例えばミュージカルとかもそうですけれども、芸術というのは明らかに正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力、芸術であって、それが足りないと芸術にはならないと僕は思っています。」

 

徹底的に音ハメされた振り付け、

複雑なステップ、

手まで繊細に使ってすべての音を表現するスピン、

こだわり抜かれた衣装と編曲、

そして超絶技巧の軌道やつなぎから軽々と舞い上がり、細くまっすぐな軸を保って高速で回転し、滑らかに着氷する教科書通りの美麗なジャンプ。

プログラムの世界観を表現することが第一で、どんなに難しい要素でもそのためのパーツでしかないから決して難しさは見せず涼しい顔でこなしてしまう。

「高得点のため頑張って跳びます」ではなく、「理想の表現のためにはこのジャンプをこう跳ぶのがベストだから跳びます」という意思が伝わってくる。

スケーティング、スピン、ステップ、ジャンプのすべてが高品質というだけでも類稀なスケーターですが、その域すら超えて文字通り技術を芸術に昇華しているのが羽生結弦

だからこそ世界中の解説者や名スケーターが彼を「史上最高」と称する。


ジャッジの主観から逃れられない採点競技だからこそ、羽生さんのスケートが思いがけない低評価に晒されることもあります。

近年では、表現は二の次で4回転を跳びまくり高得点を叩き出すことを一義とするのが主流になりつつあるようにすら見えます。

濃密なつなぎや難しいジャンプの入り出を捨てて高難度ジャンプに注力し、爆発的な得点を出すことは羽生さんならおそらく簡単にできる。

でも彼は愚直に自分の理想を追求し、決してそれを曲げない。

単に才能あるスケーターだからではなく、ひたすらに真摯な求道者だから私は彼のファンになりました。

中国(ファンの総数はたぶん日本より多い)、韓国(平昌でも大盛り上がりだった)、ロシア(ファンコミュニティは驚くほど大規模)、イタリア(”ユヅリーテ“の情熱は指折り)をはじめ世界中にいる同志の大部分もきっと同じです。

 

フィギュアスケートをミュージカルになぞらえるなら、

すべての基礎となるスケーティングはお芝居

結果を出すために不可欠なジャンプは歌

プログラムを華やかに彩るスピン・ステップはダンス

だと思います。

(ジェンヌさんはミュージカル役者ではないけれど、ミュージカルの上演が多いのであえてこの言葉をチョイスしました)

これに当てはめるなら だいもんは優れたジャンパーでありながらスケーティングも美しく、スピン・ステップでも魅せることができる「トータルパッケージ」なスケーター、すなわち羽生さんと同じタイプ。

 

だいもんの歌声が素晴らしいと思うのは、歌うことがゴールなのではなく 歌が物語を伝えるためのパーツとして作品の流れに溶けこんでいるからです。

これは、息するように歌える天性の歌い手にしかできないことだと思います。

そして演じる力も卓越している彼女だから、語るように歌い 歌うように語るというミュージカルならではのハードルをいつも楽々と超えてくる。

…高難度ジャンプを表現の一部にしてしまう羽生さんに通じるでしょう?

さらに、ジャンプで加点を引き出す入り出の工夫をロングトーンやビブラート、こぶしなどのテクニックに置き換えると…

これも羽生さんとだいもんが当たり前のようにこなしてしまう要素で、やはりこのお二人って相通じていると思います。

強いて言うなら柔軟性に恵まれ、男子では珍しくスピナーとしても評価の高い羽生さんに対してだいもんはいわゆるダンサーではないかもしれませんが、花組時代から上級生の方々を見て磨きをかけてきたであろう彼女のダンスが私はすごく好きですし、男役としての魅力が溢れているなと感じます。

より良い舞台をつくりあげるため日々努力を重ね、時に「宝塚を超えた」と評されるほどの歌声を響かせつつ宝塚らしい品格のある美しい夢を見せてくれるだいもんは類稀な舞台人。

だいもん率いる雪組さんの舞台は紛れもなく「揺るぎない技術によって裏づけられた美しい芸術」であり、彼女が羽生さんのファンでなかったとしてもきっと私はお二人を重ね合わせていたと思います。

 

いつかだいもんの歌声にのせて演技する羽生さんを見るのが私の夢。

曲はThe Music of the Nightがいいなあ、羽生エリックと望海エリックの共演なんて間違いなく「美、そのもの」でしょうね。

氷上での共演がハードル高いなら、まずは対談!

羽生さんに雪組さんの舞台への感想を語ってほしいし、だいもんには羽生さんご本人に直接愛をぶつけてほしい。

きっとオタク同士の深いお話が聞けるはず!

先日阪急電鉄公式さんが羽生さんについてツイートされていたので便乗したら思いがけずいいねを頂いてしまったのだけれど、ほんとにどなたか偉い方早急にセッティングをお願いします!

 

雪組「壬生義士伝」感想

やっと壬生レボ観て参りました!まずはお芝居の方から感想とレポを。セリフはすべて「こんな感じ」というニュアンスです、ご了承ください。

 

望海風斗さん  

すべてが素晴らしかったです。非の打ち所がなさすぎて、逆にどこに言及すればいいのかと思ってしまいますが…  

まずは何より、吉村貫一郎そのものにしか見えなかった。柔らかい人柄とそれを象徴するような南部弁(流暢すぎる)、その中で芯として絶対に揺らがない家族への愛と武士としての誇り。惚れるなという方が無理です…  

吉村さんが登場してすぐしづさんにプロポーズ、という流れでそれまでの二人の関係の積み重ねは描かれていませんでしたが、それでもしづさんが大野さんの側室にというお話を蹴って吉村さんに嫁いだことが自然に感じられました。  

プロポーズのときも「断られたらこの場で腹を切りやんす!」とかなりトンデモ発言をしてますが、それすら素敵!と思ってしまうのは吉村さんのまっすぐな性格と、演者のだいもんが普段発揮している愛され力の賜物でしょうか笑  本当に理想の旦那様!!  

しかし幸せな時間は長く続かず、南部は飢饉に見舞われ…しづさんが口減らしのため川に身投げしたと聞きすぐに駆けつけ介抱する吉村さん、辛い場面ですがだいきほ初の夫婦役なんだなあと改めて実感し感無量でした😭  

そして吉村さんは少しでも多く収入を得るため、脱藩して新撰組へ。しづさん・子供たちとの別れの場面で「石を割って咲く桜」に心を抉られます…公演前にキャトルで流れてた時点で少し「う…っ😢」となりましたが、本編で聴くとさらに…伸びやかなだいもんの歌声が南部の美しい景色と別れの辛さを訴えてくる。メロディーも美しく、素晴らしい主題歌です。  

このお芝居において、吉村さんの南部弁はとても大きな役割を果たしていると感じます。素朴な響きが江戸や京から離れた南部の慎ましいらしを想像させ、同時に貧しさ故の哀しさと舎臭さも漂わせる。新撰組メンバーの中では一際吉村さんのセリフは目立ち、その存在の特異さ(お金を稼ぎ、自分と家族を生かすために人を殺す点において)を象徴し、同時に一般的に有名な隊士ではないながら紛れもなく主人公であることも明確にする。実に効果的です。  

私は原作も映画・ドラマも未見ですが、雪組版においては吉村さんが新撰組で一目おかれ、親しまれていたのだなという印象を受けました。最後に斎藤さんが「吉村は新撰組の英雄ではなく良心だった」と言っていましたが、まさにそれがしっくりくる描き方。辛いエピソードばかりのお芝居ですが、この点においては心穏やかに観ることができました。  

吉村さんが新撰組隊士として最初に登場するのは宴会のシーンで、お酒をもって甲斐甲斐しく動き回るのが可愛い笑  

そして斎藤さんの隣でお国自慢・家族自慢を始めるのですが、ここでだいもんのさりげない凄技が!!吉村さんのセリフの途中で斎藤さんの心の声が入る際、その継ぎ目に全く途切れがない!セリフはないのに手ぶりもつけながら自然に会話を続けていて、びっくりしてしまいました。これだいもんのマイクを切っているだけでご本人は普通に話し続けているんでしょうか?いや、それにしても上手なお芝居です(語彙力…)  

そしてもちろん殺陣がかっこいい!柔らかい物腰なのに、剣を構えた瞬間すっと張り詰めた雰囲気になるのがたまらないです…ギャップ萌え最高。剣客揃いの新撰組の中でも特に腕が立つという設定通り、威厳が漂っていました。  

あと新撰組で特筆すべきは、やはりハジメ君こと斎藤さんとの場面ですね。「吉村は俺にないものすべてをもっていた」というセリフ通り対照的な二人。立ち回り含めがっつり絡んでいますが、斎藤さんが吉村さんの剣の実力や人間性を認め、少しずつ心の距離が近づいていく様子がよく描かれていたと思います。とはいえ、恐らく最後まで二人の関係は友人といえるものではなかったでしょう。これは武士として常に命懸けの立場・時代故であり、現代日本人の私たちには真の意味で理解することは難しいかもしれません。  

二人のシーンは初対面からの斬り合い、名探偵吉村さん(谷さんの下手人を見破る場面です笑)、ぎりぎりまで敵軍に追い詰められた中での「南部へ帰れ!」など、本当に印象的なものばかりでした。  

そして、京の登場人物で重要なもう一人がおみよさん。この二人って一回りくらい年離れているのでしょうか?若い身で2年以上吉村さんに片思いとは、おみよさん見る目があります(謎目線)  

商人になれば命の危険に晒されることもない、とおみよさんとの縁談を持ちかけられるも、家族を思って断る吉村さん。でもしづさんの面影を重ねて彼女を抱きしめてしまう…という流れが切ない。吉村さんは我に返ってすぐに去ってしまいますが、これが二人が最後に会った日なのだろうか、と考えるとさらに切ない…  

そして新撰組は新政府軍との戦へ。一人義を掲げて敵に向かって行く吉村さんに、誠の群像の土方さんを思い出しました。重傷を負い、南部藩蔵屋敷へ駆け込んだ吉村さんに旧友大野さんは切腹を命令。  

ここまでの流れで吉村さんがどんな気持ちを抱いていたのか、すごく考えさせられます。なぜ他の隊士たちと行動を共にしなかったのか。戦の際は死を覚悟していたはずなのに、なぜ大野さんに助けを求めたのか…  

命令を受け入れ、一人切腹までの時を過ごすお芝居が圧巻でした。それまでも散々辛いシーンばかりだったけど、雪を見て呟いた「南部に帰ったみたいだ…」が刺さりました。もし百姓に生まれていたら、と言いつつもすぐに「武士らしく死なねば」と弱音を打ち消す流れが、吉村さんが家族愛と武士の誇りの両方を何より大切にしていたことの象徴だと感じます。  

そして懐から懸命に稼いできた銭を取り出し、家族を思い浮かべながら数えるシーン…ずるいです。こんなの見せられて泣かずにいられるでしょうか。  

大野さんが用意した握り飯や太刀には手をつけずぼろぼろの刀で切腹したのは、確か歌劇でだいもんも話していたと思いますが吉村さんの意地だったのでしょう。  

彼は最初から最後まで武士を貫いた、ということなのだと思います。  

ラスト、しづさんの隣で皆に囲まれて笑顔を浮かべる姿に救われた思いでした。再び主題歌を歌っていますが、歌詞も同じなのに1度目とは歌い方が全く違うのはさすがです(天下の望海風斗氏ですから、こんなことは今さら指摘するまでもないのですが)。  

様々な魅力溢れる主人公・吉村貫一郎を演じるだいもんが見られて本当に良かったです!

 

真彩希帆さん  

しづさんとおみよさんの二役を演じた真彩ちゃん。  

しづさんはひたすら耐える役ですね。だからこそ冒頭の幸せな場面が嬉しい。雪ん子ちゃんたちに囲まれてだいもんとぐるぐる回ってるのが可愛くて…歌声は、歌詞もないのに第一声から鳥肌が立ちました。こんな歌声の持ち主は真彩ちゃんだけです、やっぱり。  

その後のシーンでは、子どもたちを守ろうとする母の強さが伝わってきました。口減らしのためにお腹の子共々死のうとしたのも、家族を思えばこそ。(吉村さんと大野さんの会話でさらっと出てきましたが、食べ物がないため死人の肉を…というのは当時の飢饉ではは珍しくなかったようです。そんな中で、この3番目の子を立派に育てるにはどれだけの苦労があったのでしょう)  

吉村さんとの別れの場面でも、追いかけようとする子どもたちに対してしづさんはじっと見つめているだけ。恐らくもう会えないだろうという覚悟もしていて悲しくない訳がないのに 表には出さず見送る姿に、武士の妻としての心意気を見ました。  

石を割って咲く桜、映像でも素晴らしかったけど生で聴いたときの劇場全体を包むような壮大さには及ばないです。テクニックや音程を意識する次元を突き抜けて歌声に浸らせてくれるだいきほ、上手すぎて素敵すぎて泣ける…  

歌といえば他にも「あなたを待つ…」と歌う銀橋ソロ、真彩ちゃんの歌声はもちろんメロディーも美しくて素晴らしかった。強弱を落としてもしっかり聴こえる、かなり大きな音の跳躍を難なくこなすなど、さりげなく技術的にも高度なことをやってるんですよね。流石真彩ちゃん!早く音源が欲しい!  

村の人々に無礼を働いてしまった嘉一郎を平手打ちし、薬を買うため吉村さんがくれた簪を手放し、泣くみつをなだめる場面。すべては貧しいことが原因、というやるせなさが辛い。「堪えてね…堪えてね…」が辛い…  

そして吉村さんの切腹と同時に銀橋を渡っていく場面。「鼻緒が…」の、文字通りぽろりとこぼれたような響きに泣きました。ファントムに引き続き、真彩ちゃんがだいもんのレクイエムを歌っているのですね…  

最後に吉村さんの死を知らされる場面で、しづさんは何も騒がず受け入れました。前述の鼻緒を虫の知らせと感じていたのかはわかりませんが、やはり死別を覚悟していたと同時に夫が誇りをもって死んだことを確信していたのではないでしょうか。  

決して豪胆ではないですが静かな強さを見せるしづさんを、真彩ちゃんは的確に演じていたと思います。  

おみよさんは貧しいしづさんとは対照的に、裕福な大店のお嬢さん。皆さんが「真彩ちゃんの「ふんっ」が可愛い」って言っていた理由がよ〜く分かりましたよ!あれはダメ、わがまま聞いて何でも買ってあげたくなっちゃう…(悶)  

そもそもおみよさんの真彩ちゃんは声からして超可愛い☺️トップ娘役就任後大人っぽい役ばかりだったので、新鮮で嬉しかったです。  

吉村さんは妻子持ちだと八木さんに言われて「何年もほったらかしのくせに」と言ってしまうあたり、気が強いを通り越して傲慢にすら聞こえますが、これは若さ故の無知の表れでしょう。吉村さんが家族を思えばこそ決死の覚悟で単身京へ来ていることを呑み込めていない。或いは、そうしなければならないほどの貧しさを理解できないのかもしれません。  

しかし、耐え忍ぶ女性である点はしづさんと同じ。おみよさんの望み通り縁談が持ち上がったもののきっぱりと吉村さんに断られてしまい、本心を隠して強がる様子がいじらしく切ない…もしかしたら望んで手に入らなかったものなんてそれまでなかったかもしれないけど、吉村さんや池波さんの真摯な思いを受け止めたのでしょう。  

しかし、しづさんの名を呼んだ吉村さんに抱きしめられ、彼がすぐ去ってしまったことで追い討ちが…一人になって表情を歪め、「ほ、ほ、ほーたる来い…」と漏らす場面は真彩ちゃんが上手いから余計に辛い。  

吉村さんは無邪気で明るいおみよさんを好ましく思っていたと思いますが、しづさんと面影が似た彼女が 自分がしづさんに与えられなかった華やかな装いをしているのを見ることに苦しさも感じていただろうと想像します。  

その後戦へ向かう新撰組をおみよさんは舞台の端でじっと見つめていて、それだけ本気で吉村さんを想っていたのだなと感じさせられました。でもきっと、彼との出会いと別れを経て少し大人になった彼女は、いつか他の人と結ばれて彼のように立派に家族を守るのでしょう。そう思わせてくれる、真彩ちゃんの素敵なお芝居でした。

 

彩風咲奈さん  

心許す友でありながら身分違いとなってしまった吉村さんに最終的に切腹を命じる大野さん、難しい役だったと思います。  

幼少期からの吉村さんとの関係の深さを示す場面がなく、登場する時間も短いので、キャリエールよりさらに大変なのでは。主人公ではないため一気に役の時間が経過してしまい、歳月を経た変化も分かりやすく表現しなければなりませんし。  

今回は斎藤さんと吉村さんの絡みが多い分そちらの方が良い役では、という意見も見ましたが、それでも二番手にふさわしいのは大野さんだと思います。そして咲ちゃんは、この難しい静のお芝居をしっかりこなしていたのではないでしょうか。  

大野さんは南部藩を支える責任ある身分であるため、自分を殺して藩のためを最優先に考えなければならない。だから脱藩を告げられた際は「たわけ!」と責めますが、いざ出立のタイミングで通行手形をこっそり届ける場面から吉村さんへの思いと 本音と建て前の板挟みである苦しさが伝わってきました。  

切腹を命じたのも、藩に罪が及ばないようにするため。吉村さんと二人きりでないときに位が上の者としての態度を崩さないのも、情に流されないよう自分を律するためでしょう。  

そんな大野さんが唯一本心を出せるのが、実母の前。二人の場面はとても印象的でしたが、咲ちゃんにとって馴染み深い前組長のみとさんが演じられたからこそのお芝居だったかもしれません。  

一方で吉村さんの死後嘉一郎に接する場面では、優しさと厳しさを併せ持った父性を感じ、包容力に溢れる咲ちゃんのお芝居がとても心に残りました。

 

凪七瑠海さん  

かちゃさんに関してはまず一言、もったいない!!!新撰組に携わった医師として明治と幕末をつなぐ役割は良いですが、とにかく出番が少ない…殺陣が出てくる場面には出せなくても、宴会とかに少しぐらい出演場面を作っても良かったのでは?せっかく上級生の余裕ある専科さんが特出しているのに、采配が残念でした。  

とはいえ、かちゃさんご本人はとても素敵!懐かしむように語る口ぶりから新撰組や吉村さんへの親愛の情が伝わってきましたし、カレンさんとの並びも 穏やかで理想の夫妻という感じ。

 

彩凪翔さん  

凪様@土方歳三という配役から大勝利!もうね、語彙力最弱で申し訳ないですがかっこいいとしか言えないです。  

あーさ、ひとこちゃんと一緒に銀橋を渡ってくる初登場から「…かっこいい…」ってなりますし、何より!宴会シーンの土方さんが!!脇息にもたれて姿勢を崩して座ってるのがめちゃくちゃかっこいいのです…あれは反則。あーさにロックオンしようと思ってたのに数秒フリーズしてしまいました、本当に笑  

あとは、新撰組が旗本に取り立てられたと隊士たちに伝える場面。土方さん一人だけ(たぶんそうだったはず)が明るめな色の羽織を着ていたのですが、それがまた鮮やかで大変お似合いでした!素敵🥰  

もちろん内面や行動もかっこいい土方さん。今回は「鬼の副長」というより、威厳はありつつも人間味溢れ、皆に慕われるリーダーという印象を受けました。吉村さんとおみよさんのお見合いに立ち会うシーン然り、谷さん暗殺に関して深く追及せず「謹慎が明けたらこれで酒でも飲め」と二十両を渡すシーン然り。  

もっと彼が登場する場面を見たかったなあ…

 

朝美絢さん  

だいきほが出ていない場面はほとんどあーさを追っていました。顔が良いだけじゃない舞台人・朝美絢がとても好きなので、できる限りちゃんとお芝居を見たかったのです。  

鹿鳴館のシーンから登場ですが、いきなり殺陣を見られてテンションが⬆️  

過去シーンでは、とにかく吉村さんとの絡みが多いので見所たっぷりでした。  

「斬ってくれる奴がいないから生きてるだけだ」と刹那的とも言えるような生き方で、いつも怒っているような表情の斎藤さん。でも沖田さんや吉村さんと関わるときに垣間見える人間らしさが魅力的で、これまたずるいキャラだなあと笑  

特に、兵糧が尽きそうな中自分は食べずに他人に握り飯を渡す吉村さんへの叫びは印象的でした。「なぜお前は優しさを失わぬ」「南部へ帰れ(=死ぬな)」というのが、様々な出来事の末に斎藤さんが吉村さんへ抱いた本心だったのですね。深い…  

あと、斎藤さんが谷さんを殺したと知って口止め料を要求する吉村さんへの「おもさげ野郎…!」。このセリフがあると皆さんのレポで知ったときは微妙な気持ちでした。「おもさげながんす」をネタにするのは、守銭奴と見下されても家族のために頭を下げ続けてお金を稼がなければならない吉村さんを馬鹿にしているように感じたから。でも、その前からの流れやあーさのお芝居を含めて観ると、そのような嫌な響きではなく、ちょっとふざけた返しができるくらい吉村さんに対する斎藤さんの意識が変わったということなのかな?と。それでも賛否が分かれるところかもしれませんが。  

そしてあーさを追っていて気づいたのですが、斎藤さんは吉村さんの死までが語られ鹿鳴館に戻る最後のシーンのみ、笑顔を見せているのです!と言っても僅かに口元を緩めている程度ですが、確かに微笑んでいる。ここにも、吉村さんや彼が遺したものへの思いが窺えます。  

私はだいもんとあーさの絡みが大好きなので、斎藤さん役が彼女にあたったことにとても感謝しています。

 

永久輝せあさん  

ひとこちゃんの沖田総司!これまた配役が素晴らしい。私、彼女の声がかなり特徴的だと常々思っています。変な癖があるというわけではなく、華やかで若々しい声だなあと感じるのです(説明が下手…)。なので、そんな彼女の声は沖田さんにぴったりはまるなと思いながら観ていました。  

彼の場面で目立つのは、やはり斎藤さんとの絡みでした。「沖田が咳をするのはハジメ君の前だけ」との裏設定があるという二人。  

斎藤さんとはタイプが違いますが、沖田さんも死を身近に感じながら生きているという感じがします。彼の場合、新撰組であるという以外におそらく結核も関係していますよね。「斬っちゃいましょうか」とさらりと言えるところに人の死への感情が希薄になっている印象を受けるけど、「僕たちが行けるのは地獄ですよ」というセリフには、平気なようでいて死を恐れる感情も見える気がする。  

暴走しがちな斎藤さんのブレーキになる沖田さん…と見せかけて、斎藤さんは沖田さんにとって精神安定剤のような存在でもあったのかもしれません。この二人の関係も深い!もっといろいろ考察してみたいです。

 

その他のキャスト  

まなはる先輩の近藤さん、誠でにわさんが演じられていたことを思うと若い配役なのかなあと思っていましたが、やっぱり安定していますね。そもそも土方さんの凪様と同期なのでその点でも適役かも。  

あやなちゃんの千秋さん、お父さんに似た穏やかさを感じるお医者様。みつさんともお似合い!  

縣くんの池波さんは、吉村さんはじめ先輩隊士たちへのまっすぐなリスペクトが伝わってきて素敵。  

彩海くんの嘉一郎とみちるちゃんのみつ、子役二人が上手すぎる。嘉一郎の家族を守ろうとする純粋で懸命な思いと、みつの泣き声がすごく心に残っています…本当に素晴らしかった。  

ひらめちゃんの大人みつさんは淑やかで聡明さを感じるレディー。みちるちゃんのみつがまっすぐに育ったんだなあ、としみじみ…  

芸者のソロを歌ってたのって愛すみれさんですよね?日本物のこぶしきかせる曲もお手の物、さすがのお上手さでした。  

そして、りーしゃさんの佐助さんとおーじくんの八木さんが本当に良い仕事してた!出番は多くない役ながら、こういう力のある役者さんが演じると舞台のクオリティーがぐっと上がりますよね。

 


演出・脚本について  

気になった点をいくつか…  

まずビショップ夫人の演出鹿鳴館とつなげるためでしょうが、外国人設定はどうしても必要だったのでしょうか?せめてカタコトに喋らせるのはやめて欲しかったなあ。  

先述の通り、かちゃさんの使い方も大いに反省を促したいところ。もったいないです!  

あとは多くの方が指摘している最後の「玉の輿」、あれは本当にない。それまでジェンヌさんが作り上げてきた素晴らしい世界観に一気にケチがついてしまう…なんでわざわざこれを入れたんだろう、他に何かあったでしょ…?

 

最後はネガティブなコメントになってしまいましたが、全体的には本当に見応えある良作だったと思います。宝塚の、雪組の日本物は素晴らしい!劇場で観ることができて良かったです。  

なんだか暗そう…と敬遠されてしまいそうな内容ですが、だからこそ感じとれるものがたくさんありました。原作もしっかり読んで、しばらくこの世界に浸っていたいです。