ろっぴーのブログ

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「CHESS」感想と「NOW!ZOOM ME!!」外部ゲスト出演について

ミュージカル「CHESS」を観劇しました。 「NOW!ZOOM ME!!」(これの略称は何が正解なんでしょうね?頭の中ではのーぞーみーって読んでるんですが、とりあえず以下のぞコンと表記します)とのセット販売でゲットした席だったので、隣の二人連れは「みりおちゃんが〜」って話してるし前列のお姉さんはデジマの先行画像を待ち受けにしてるし、周囲一帯の同志感がすごかったです。

今回観るまでストーリーも楽曲も全く知らず、英語での上演だったので事前にネタバレ込みでストーリーをチェックし(公式サイトに載っていてとてもありがたかった)、ナンバーもすべて聴いてから臨んだのですが、字幕を見ながらだとどうしてもパフォーマンスに集中できないので 内容を把握してから行って良かったなと。

ストーリーはざっくり説明すると
冷戦下の時代、チェスプレイヤーとその関係者が国同士(アメリカとソ連を中心とした東西関係)の政治的な立場に翻弄される
…というものなのですが、
・ほぼセリフがなくナンバーで構成されている
・チェスの試合を舞台上で行うシーンがあり、舞台中央の限られた空間だけでメインキャストが小さく動く時間が長め
という2点から、小劇場向けの作品だと感じたし コンサート形式で上演されることが多いということにも納得しました。
社会的背景やセリフで説明されない設定を映像で補っていたのはわかりやすくて良かったと思います。

あと、登場人物がみんな完璧な善人じゃない。
だからといって完全な悪人もいなくて、その人間らしさを味わうことに意味があると思うのですが (特に主人公に)共感しながら観るという楽しみ方はできないかな。
強いていうなら主人公アナトリーの妻、スヴェトラーナには共感しやすいかもしれません。ミス・サイゴンのエレンみたいな立ち位置なので。

個人的にはストーリーからカタルシスを得るのは難しかったのですが、多少モヤモヤする箇所があっても 楽曲とキャストの歌唱のハイレベルさに押し切られた感があります。
内容も良いに越したことはないけれど、こういう風に音楽でねじ伏せてくる力こそ私がミュージカルに求めているものなので(“ミュージカルに”であって“宝塚に”ではない)、全体的にはとても満足できる観劇でした。

ミス・サイゴンといえば、2幕冒頭のバンコクのシーンでこの作品を連想しました。女性ダンサーだけが踊るセクシーな振り付けとオリエンタリズム(オリエントを支配、威圧するための西洋の様式)を感じる歌詞。
終演後に男性グループが「あそこポリコレ的にどうなんだろうね」と話しているのを耳にしましたが、確かに現代の感覚に合わせてこういう描写を見直していく必要はありそうです。

さて、メインキャストについて。

ラミン・カリムルーさん
主人公アナトリー役。祖国ロシア(ソ連)に妻子がいるのに対戦相手のセカンドであるフローレンスと恋に落ち、共に亡命し…
この「そもそもあなたが倫理的にアウトじゃない?」っていう感覚、雪組ファンなら記憶に新しいはず。そう、我らがキャリエールさん。
妻子がいるのに出会ったばかりの女性と旅立ち、ラストは彼女と熱いキスしておきながら妻と国に帰るというね…ちょっとどうなの、と言いたくなるんですが、まあラミンですから。細かいことは気にせずその歌声にひれ伏しておけということでしょう。

私はオペラ座25周年公演の映像でラミンの歌声を初めて聴いて なんて素晴らしい俳優さん!と感激して以来、生で舞台を観てみたいと思っていて。
昨年エビータでも来日していましたがそちらには行けなかったので、今回が初でした。
(エビータ観に行った私の友人は、終演後シアターオーブ下のデパ地下で彼にたまたま会ってツーショットを撮ってもらったそうです。海外のファンにも気さくな方!)

初めて生で聴いた歌声は、声を張っても全く耳障りでなく綺麗に響くし、当たり前ですがすべての音域が完璧だし、魔法にかけられているような感覚で…掌握力が半端じゃなかった。
この作品はロックテイストで叫ぶように歌うナンバーが多くて、ゆったりしたメロディーで圧巻のロングトーンを響かせるラミンを堪能できなかったのは少し残念でしたが(Anthemはしっとりした美しい曲調で素晴らしいソロナンバーだけど、いかんせんちょっと短い…)これ以上望むのは欲張りすぎですね。
セット販売でとったのがのぞコンのラミン出演回なので、そこでまた彼の歌を聴けるのを楽しみにしています。

その外部ゲスト出演についてなのですが、発表の際から宝塚ファンの中でも色々な意見が飛び交っているような気がします。
今回のゲストがお二人とも男性ということで「女性のみ」という宝塚の前提は?とか、本当に外部ゲストが必要なのか?とか。

ただ、確実なのはだいもんも劇団もゲストお二人もこれらの意見は想定した上で出演が決まったことだと思います。
女性のみで構成される宝塚の唯一無二の価値や伝統は 妹さんがOGで他の現役生(だいもん)やOGとも共演経験が多い井上さんはもちろん、スカステでのだいもんとの対談やTCA PRESSのインタビューで真摯に語っていたラミンも理解しているはず。

ラミンの場合は、言語のハードルもある。これについては彼がインスタに投稿していた佐藤隆紀さんとのデュエット(レミゼのBring Him Home)をぜひ観ていただきたいです。
https://www.instagram.com/tv/B8LI0NyATgG/?igshid=1s7voo3nhfmbe

そして、この動画に添えられたメッセージを読めば彼のスタンスがわかるのではないでしょうか。以下に一部抜粋します↓
We decided to meet each other halfway with language and simply enjoy ourselves doing what we love.

元々井上さんもラミンも好きな私の意見が偏っているのは承知の上で、今回のゲスト出演を歓迎します。お二人とも色々なハードルを超えて、雪組さんとお互いに舞台人としてのリスペクトをもちながら音楽を通じた素晴らしい交流を見せてくれるのではと楽しみです。ラミンとの共演は以前からのだいもんの夢でもあるでしょうし。
とにかく今はだいもんがお二人の出演をリクエストし、劇団とお二人がそれを受けたという事実がすべて。これが宝塚の新しい可能性を開く結果となるのかそうでないのかという評価は、舞台や映像で実際に公演の様子を観てから下すべきだと思います。

サマンサ・バークスさん
アナトリーと恋に落ちるフローレンス役。
パワフルな歌声と高いピンヒールでも全く揺らがない美しい立ち姿、プロだなあと。
少し硬質な歌声がよく通って、男性4人に彼女1人みたいなナンバーでも数に負けていなくて素晴らしかったです。

ルーク・ウォルシュさん
アナトリーと対戦するアメリカのプレイヤー、フレディ役。
ただの傲慢で偉そうな奴かと思いきやそうではなく…という彼のバックボーンがわかるソロ、Pity The Childがすごかったです。ラミンの深みある低音と対照的な 突き抜けるような高音が圧巻でした。

佐藤隆紀さん
上述のラミンのデュエットのお相手、シュガーさん。試合の審判、アービター役でストーリーテラーのような役どころでした。
東宝エリザの映像(2016 White ver.)を観たとき メインキャストでは佐藤フランツと涼風ゾフィーの歌唱が抜きん出ていると感激したのですが、今回も海外のスターに負けず実力を発揮されていました。
ふくよかな美声も含め、とても好きな俳優さんです。

他のキャストもアンサンブルまでしっかり歌える方ばかりで、ストレスなく楽しめました。素晴らしかった!