ろっぴーのブログ

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だいきほ≒エリクリ論〜雪組ファントムを語る〜

雪組の皆さんはすでに壬生義士伝の世界の中ですが、私の目線からファントムを語ってみたいと思います。後述するように思い入れの深い作品なので、すこぶる独断的な意見であることを最初にお断りしておきます。

私にとっての「オペラ座の怪人
いろいろ書きたいことがあるのですが、まず自分語りをさせてください。
オペラ座の怪人との出会いは、7・8歳の頃に学校の図書室で読んだ原作の児童向け版でした。今も覚えているので子供心にかなり印象的だったのだと思いますし、そのときからラウル×クリスよりエリック×クリスが好き=エリクリ派でした。
初めて触れたミュージカルもオペラ座。10歳頃だと思いますが、ALW版(POTO)の映画のDVDを観ました。名曲揃いの美しい音楽と物語に惹かれ、今でも一番好きなミュージカルです。(思えば、私が「急に歌い出すのが変」という違和感をおぼえずにミュージカル好きになったのは、ほぼセリフなく歌で構成されたPOTOのおかげかもしれません)
そして、私の中でオペラ座が再燃したのが2014年(その前に四季で観ているのですが、そのときは観ただけで終わりました)。推しである羽生結弦選手がプログラム使用曲と発表したのがきっかけで、
断片的な練習映像を見て「ここの音楽は何の曲?」と気になる→映画を再び観る→原作(今度はオリジナル)を読む→さらに作品に浸りたくなる→スーザン・ケイ著「ファントム」、フレデリック・フォーサイス著「マンハッタンの怪人」を読む
と、すっかりこの作品の世界観にハマったのでした。
物語を文章で味わうことでいろいろ考察することができたのですが、中でも「ファントム」は印象的でした。だいもんも役づくりの際に読んだとおっしゃってましたが、エリックに思いを馳せたい方にはぜひおすすめします!
そうやってストーリーや登場人物のことを考えているとき、一つだけモヤモヤすることがありました。それは、クリスティーヌの声についての描写。原作では「まるで天国の天使の声」「未知の美しさと超人的な高まり」などと表現されています。 でも何だか現実離れしている感じがして、これらを読んでもあまりイメージが湧かなかったのです。POTOは映画、四季、25周年記念公演(DVD)などを観ているのですが、このような設定を踏まえてクリス役の方々の歌声を聴いても「まあ、そんなもんかな…?」としっくり来ず。
…すごく偉そうな書き方になってしまいましたが、彼女たちを否定するつもりは全くありません!特に25周年版のシエラ・ボーゲスさんはキュートで上手くて大好きな女優さんですし、彼女のクリスも大好きです。
(そういえば、25周年版ファントム役のラミン ・カリムルーさんはだいもんの推しとして有名ですよね。去年の夏お二人の対面が叶ったこと、とっても嬉しかったです。まさかラミンのインスタに麗しき雪組の皆さんが登場するなんて!!)
Ramin Karimloo on Instagram: “Was honored to have Takarazuka Star, Futo Nozomi and her wonderful cast mates, Jun Asami, Sea Towaki and Kiwa Asazuki come and see…”

何はともあれ…クリスティーヌを描写する上でまず出てくる言葉は「天使の歌声」だと思いますが、それを体現する女優さんはなかなかいないのだなと思わされました。歌うまといえる人さえ一握りしかいないのに、さらに高いハードルなのだから当然なのかもしれません。だから、クリス役の女優さんは最低限「息するように歌える人」であってほしい。可愛らしさやら清楚な佇まいやら演技力といった要素を語るのはそれをクリアした後、というのが私の考えです。
ただそうやって妥協しても、天使の歌声をもつ人は本当にいないのかなあというモヤモヤは解決することなく。そのうち自分の中のオペラ座熱もすっかり落ち着いた頃、突然答えが見つかったのでした。

私の音楽の天使
答えをくれたのは真彩希帆さんでした。ブリドリの公開収録の映像を見て、数年越しの疑問が氷解したのです。
とんでもなく響く常人離れした美しい声で歌う初々しく可愛らしい真彩ちゃんを見て、「あ、これがクリスティーヌか」とストンと腑に落ちたことを覚えています。こんな声聴いたことがないと思った。
真彩ちゃんの歌声を初めて聴いたときのことはソロを語る記事に書きましたが、そのときも衝撃を受けたもののクリスティーヌを連想するには至りませんでした。
それは、真彩ちゃんと同様「エリックがここにいる」という感覚を与えてくれただいもんとの相乗効果が為せる業だったのかもしれません。とにかく、そのとき私は自分にとっての音楽の天使を見つけたのです。
これを機に、エリックの心情の一端を理解できるようになりました。それ以前は共感や理解というより エリックがクリスに執着するのを物語の大前提として受け入れている感覚でしたが、私自身が真彩ちゃんの歌声を聴いてファンになったことで クリスの歌声を見出し才能を開花させるだけに留まらず 彼女を女性として愛し、愛されることを望むエリックの気持ちが少しわかったように思います。
そこまで思わせてくれる歌声の持ち主に出会うこと自体叶わずに一生を終える人もいるはずと思うと、自分の幸運をすごく実感します。大げさでしょうか?でも私はそれくらい真彩ちゃんに惚れこんでいるのです。

そして私は多くのファンの方同様にだいきほ率いる雪組のファントム再演を待望し、それが決定すると大喜びで公演の様子を妄想し、開幕後はできる限り観た方の感想を追い…(諸事情あってライビュすら観に行けなかったのでこれが精一杯でした😣)と夢中の日々を過ごしたのでした。
公演当時から連日大盛況の様子が伝わってきましたが、先日音源が配信された際も物凄い勢いは健在でしたね。

さて、やっと本題。この超大ヒットの要因を私なりに考えてみます。

だいきほ≒エリクリ論
まずはもちろん主演お二人。彼女たちがいたからこその再演だと思いますが、それほど説得力があるキャスティングになった理由はいくつかあるように感じます。
①リアル音楽の天才&音楽の天使
天使の歌声をもつキャストをクリスティーヌに据えるのは至難の業…という私の感覚は上述の通りですが、同時にエリック役にふさわしい才能まで揃えるのはさらに超難題。これを実現してしまった雪組ファントムって本当に奇跡のような公演だと思います(贔屓目上等!それに、恐らくそこまで贔屓目でもない)
私、真彩ちゃんが音楽の天使ならだいもんはアポロンに愛された人だと思っています。息するように歌い、全身全霊で役を生き抜く彼女のエリックが見られたこと オペラ座の怪人のファンとしても舞台人・望海風斗のファンとしても心から幸せです。
ほんっとうにとんでもないお二人!!

宝塚歌劇団のトップコンビ
この点に言及している方をこれまで見たことがないので私だけの感覚かもしれませんが…キャストさえ揃えば、宝塚のトップコンビほどエリクリにふさわしい役者はいないんじゃないかと思っています。
エリックとクリスは音楽によって魂が結びついた二人であり、この普通ではない唯一無二の関係を演じるにあたっては役者同士の信頼関係も重要な要素になるのではないでしょうか。少なくとも、互いによく知る間柄の二人が演じる方が良いものが生まれるような気がします。
外部ミュージカルでは作品ごとにキャストが集められ そのとき限りのカンパニーを作るのが一般的であり、劇団である四季もメンバーが固定されていないのは同じ。その中で宝塚のトップコンビという特殊なシステムは、この作品においては最高に望ましいものなのでは!?上級生のトップ(基本的に)からトップ娘役が学びつつ共に舞台をつくりあげるという関係。そして組全体についても、宝塚というホームで日々稽古を重ね舞台に立つという点が オペラ座でレッスンに励む登場人物たちと重なります。

③師弟関係がしっくりくる学年差
②に補足すれば、だいきほはトップコンビである上にその学年差がまた素晴らしい。だいもん89期、真彩ちゃん98期の9学年差というのが師弟関係であるエリクリを演じる上でとてもしっくりきます。普段から真彩ちゃんがだいもんの背中を見て様々なことを吸収しているのが伝わってきますしね。

④お二人の個性
これは単純に、陰のある役が似合うだいもんと陽性な真彩ちゃんの組み合わせが完璧!という話。でもこれが逆だったらここまで適役にはならなかったかもしれないし、大切なポイントですよね。

⑤5年越しに叶った夢
もしかしたらこれがファントム再演を実現させた一番の決定打だったかもしれませんね。
花組時代に尊敬するお二人のトップさんが演じるエリックを見て憧れただいもんと 男役志望だったファン時代に唯一演じてみたかった娘役のお役がクリスティーヌだったという真彩ちゃん。お二人が共演した際にその夢を口にし、一度だけ実現したデュエットが多くのファンを魅了し、一度は離れたお二人がまた出会ってトップコンビになり、ついに夢を叶えた。
なんて素敵なストーリー、と言ってしまえばそれまでだけど、これはお二人が夢を語るだけの意思とその実現に必要な力をもっていたから叶ったことなんですよね。お膳立てされたのではなくご本人たちが紡いだ軌跡だからこそ、私はだいきほのファントムは至高だと感じます。

その他メインキャストについて
もし主演が申し分ない出来でもそれだけでは舞台は成り立たないし、あそこまで観客を魅了することもできなかったでしょう。素晴らしいコーラスやお芝居で作品を支えた雪組の皆さんの中でも、特に大きな役割を果たした方々について私見を述べます。

彩風咲奈さん@キャリエール
ドンジュアンやひかりふるに続き、「暴走するだいもんを止めようと奮闘する咲ちゃん」の構図。笑
こういう設定のときに思うのは、のぞ咲の身長差はパーフェクトということ。銀橋で咲ちゃんにすがりつくだいもん、しっかり受け止め抱きしめる咲ちゃんの画は本当に素晴らしかった…
もちろんそれだけでなく、だいもんがおっしゃっていたように咲ちゃんのキャリエールはとにかくエリックへの愛情で溢れていたように感じます。大きな十字架を背負い我が子への複雑な思いを抱えたキャリエール、咲ちゃんは見事に体現していたと思います。
クライマックスのYou are My Ownも見応え・聴き応え十分でした。
(この曲「お前は私のもの」って訳されてますけど私は何だか違う気がするんですよね…調べてみるとown(形容詞)には愛する者[家族]、もしくは 血を分けたという意味があるんです。なので物語を踏まえるとエリックにとってはYou are My Own Father、キャリエールにとってはYou are My Own Sonが曲名になるのではないかなーと。あくまで私の妄想ですが!)

彩凪翔さん、朝美絢さん@シャンドン伯爵
私、だいきほでファントム再演を知ったときはキター!とガッツポーズし、凪様とあーさのシャンドン役替わりを知ったときはこれで必勝間違いなしと確信いたしました。
美形揃いの雪組男役さんの中でも(個人的に)イケメンの代名詞であるお二人が白馬の王子様的キャラを演じるのですもの…これ以上のキャスティングがあるでしょうか。お二人ともビジュアルの攻撃力だけでなくお芝居でも魅せられる方々だとわかっていて実際その通りでしたからね、大勝利です。
特に、単純なキラキラではなく野心を覗かせる少しぎらついたシャンドンというあーさの役づくりはすごく新鮮に感じました。凪様が王道に演じて高評価を得たのに対し、役替わりの醍醐味だなあと思います。

舞咲りんさん@カルロッタ
ヒメさんのカルロッタ〜〜大好き!私は過去公演では一花さんやゆきちゃんの役づくりが好きでした。正統派・クラシカルな歌い方ではないところが エリックが彼女の歌を毛嫌いする流れに説得力を与えていたし、それ以外のお芝居にも違和感がなかったからです。なので、雪組版のキャストが発表される前からどなたが演じるにせよ こういう路線で攻めてほしいなと思っていました。
そしてヒメさんは私の理想のカルロッタでした!!芸歴が長いベテランながらいつも可愛らしいお姉様であるヒメさんだからこそできる、クセが強くていちいち騒がしいけれどどこか憎めなくて、夫のショレが尻に敷かれるだけでなく彼女をちゃんと愛しているのがとてもしっくりくる素敵なカルロッタ。最高です!

演出
実は開幕前、一番不安だったのはキャスト関連ではなく外枠の部分でした。制作発表でB先生が「新たに作り直して…」みたいなことをおっしゃったものだから、誠に失礼ながら変な改悪だけは避けてね!と😅
しかし蓋を開けてみればさすがは安心と信頼のB先生(ミュージックレボリューションもファンのツボを抑えた素敵な演出が多くあるようで大変楽しみにしております)、今の時代だからこそできる素晴らしい新生ファントムになっていると感じます。
まずは映像の活用、意見は分かれるようですが私はとても好きです。特に1幕冒頭はいきなりエリックのソロから入るので、
幕が上がる→歌い始める
よりも
映像で観客をオペラ座の世界に引き込む→階段に座り超絶美声を響かせるエリック(このだいもんかっこよすぎて絶対怪人じゃないと思った)
という流れは秀逸ではないかなと。
そして私の中でこっそり不安だったのがキーの問題。過去公演を聴いていると、ところどころエリックのキーが高すぎて(hiCとかが時々出てくる)女性っぽく聴こえてしまうのが気になっていました。もう少し下げた方が違和感ないし歌う側にも負担が少ないのでは、と思っていたので稽古場映像で一部のナンバーのキーが下がっているのを確認したときはガッツポーズしました笑
次に、数々の名ナンバーの中でも反響が大きかったように感じる新曲「What Will I Do」。エリックが純粋にクリスへの想いを吐露する歌詞が素敵でメロディーも素晴らしく、だいもんが本当に美しく仕上げてくれたので耳福にもほどがある。一番好きなナンバーかもしれません。
最後にフィナーレ!4度目の正直で劇中のナンバーをアレンジしたものを見られました。この構成によって単に統一感が出るだけでなく、本編のパラレルワールドを体感できるというのは想定外の嬉しい驚きでした。
その外見故に一度も家族・クリスティーヌ以外の前で歌を披露せずに一生を終えたエリック。そんな彼がキラキラの衣装で歌い踊っている!という多幸感(普通にだいもんとして見ても楽しいけどこの視点も良いですよね)。
そして何よりデュエダン、もしこんな世界線があったら…という目で見ると「この舞台でいつの日か歌うのだ きっと叶うはずさ夢は」というだいもんのソロが本当に涙腺にきます。せり上がってくる真彩クリス、その後の振り付けの素晴らしさは既にたくさんの方が述べられていると思うので割愛。
これは宝塚で上演するからこそ見られる夢ですよね、美しく切ない至高のフィナーレです。

相変わらず長文になってしまいましたが、最後にもう一人の我が推し兼だいもんの推しのステマを。
先日「現在開催中のアイスショーで羽生選手がオペラ座やるよ!」というツイートをしたところ雪組・だいもんのファンの方々がたくさん反応をくださいました。とはいえ、実はオペラ座そのものではなく、冒頭に触れた 5年ほど前のプログラム(こちらは正真正銘POTOのナンバーで構成)の続編(X JAPAN ToshIさんのマスカレイドを使用)となります。
前編はクリスティーヌとの別れ→「It’s over now, the music of the night!」で終わるので、続編は恐らく再び孤独になったエリックの哀しみや絶望から始まるもの。
…世界一のフィギュアスケーターである羽生さんが生み出す極上の芸術はとても私には言語化しきれないので、ぜひファントムの事後学習として観ていただきたいです。(きっとだいもんも観てるよ😉)
前編はこちらから。
https://m.youtube.com/watch?v=dtuATrpvB8k
後編はこちらからどうぞ! https://m.youtube.com/results?search_query=yuzuru+hanyu+masquerade

さらに今回のアイスショーでもう一つだいもんが歓喜するであろう要素がありまして…フィナーレの群舞の曲がBENIさんの「見えないスタート」だったのです。これはベートーヴェンの悲愴のメロディーにオリジナルの歌詞を付けたもの…そう、だいきほお披露目公演SVのデュエダンに通じるのです!!
まさかこんなことがあるとは思わず、初見では思わず鳥肌でした…これもだいもんの羽生さんへの熱い思いが生んだご縁でしょうか、自分ごとのように嬉しい。推しの推しが自分の推しって幸せなものです☺️
そんなフィナーレ動画はこちらから。
https://m.youtube.com/watch?v=JiebGQFwgUI

本当に長々と書きすぎてしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました!

【追記】
重要なことを書くのを忘れていました。羽生さんが平昌オリンピックで二連覇を達成した後、記者会見でこんなことを語っていたのです。
「芸術、バレエとか、例えばミュージカルとかもそうですけれども、芸術というのは明らかに正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力、芸術であって、それが足りないと芸術にはならないと僕は思っています。」

これを聞いて真っ先に私が思い浮かべたのはだいもんと真彩ちゃんの歌声でした。
私は彼女たちの歌を表現するときよく「息するように歌う」と言うけど、本当にそれぐらい軽々とどこまでも音域を駆け巡って美しく響き渡る歌声をお二人はもっていて、それがお芝居で観る人の心を揺さぶったりショーで圧倒的な輝きを放つ。
それは正しく、揺るぎない技術に裏打ちされた芸術だと思うのです。そしてこの1年後、雪組ファントムは公演そのものがこの領域に達し完成した伝説的なものになったように感じます。
大千秋楽を終えただいもんと雪組の皆さんに私が一番に捧げたいと思ったのは羽生さんのこの言葉でした。
本当に素晴らしいものを生み出してくれてありがとう、と観返す度に思える公演に出会えたのは演劇の一ファンとして最上の幸せだと思います。